「こ、こ、こんにちは」「おーーかあさん」。ある日突然、わが子の話し方に“つまり”や“くり返し”が増えて、「これって吃音(きつおん)?」と心配になる——そんな保護者はとても多いものです。一生懸命話そうとする姿を見ると、つい「ゆっくりでいいよ」と声をかけたくなりますよね。
実は、吃音は幼児期にとてもよくみられる現象で、3歳児の約11人に1人が経験するという報告があります。そして、発症した子の7〜8割は、特別な治療をしなくても自然に回復していくとされています。だからこそ、まずは正しく知って、落ち着いて関わることが大切です。
この記事では、吃音の現れ方・原因・自然回復の話、そして親のおすすめの接し方とやってはいけない接し方、相談先までを、公的な情報をもとに整理します。
この記事の主な参照ソース
- 吃音について|国立障害者リハビリテーションセンター — 吃音の基礎と支援
- 吃音(どもっている)かなと思ったら|幼児吃音臨床ガイドライン — 専門家による臨床ガイドライン
- 小児期発症流暢症(吃音)|発達障害情報のポータルサイト — 公的ポータルの解説
- 吃音とは?原因や症状、相談先|LITALICOジュニア — 家庭向けの解説と相談先
吃音(どもり)とは?よくある発達の現象

吃音とは、話すときにことばがなめらかに出にくくなる状態のこと。専門的には「小児期発症流暢症(しょうにきはっしょうりゅうちょうしょう)」とも呼ばれます。多くは2〜5歳ごろ、ことばが急に増える時期に始まることが知られています。
報告によると、3歳児の約11人に1人が吃音を経験するとされ、決して珍しいものではありません。ことばの発達が活発な時期に、頭で考えることばと、それを話す力のバランスが一時的に崩れて起こると考えられています。
そして大切なのが、発症した子の約7〜8割は、特別な治療をしなくても自然に回復していくとされていること。「うちの子だけ?」と思いつめる必要はありません。まずは「よくあること」「多くは自然に落ち着く」という前提を知っておきましょう。
吃音の種類と現れ方

吃音には、いくつかの現れ方があります。同じ子でも、時期や場面によって出方が変わることがあります。
| タイプ | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 連発(れんぱつ) | 最初の音をくり返す | 「お、お、おはよう」 |
| 伸発(しんぱつ) | 音を引きのばす | 「おーーはよう」 |
| 難発(なんぱつ) | 最初の音がつまって出にくい | 「……っおはよう」(出だしで止まる) |
最初は連発から始まることが多く、進むと伸発や難発が見られることもあります。また、調子のよい日と出やすい日の波があるのも特徴です。緊張する場面・興奮しているとき・急いでいるときに出やすくなる子もいます。「昨日は平気だったのに」と一喜一憂しすぎず、長い目で見守りましょう。
原因と「7〜8割が自然回復」の話

吃音の原因について、よくある誤解は「親の育て方や接し方が悪いから」というもの。これははっきり否定されています。吃音は、体質的要因・発達的要因・環境要因が互いに影響し合って起こると考えられており、なかでも体質的(生まれつきの)要因が7〜8割程度を占めるとされています。
- 体質的要因:もともと吃音が出やすい体質(最も大きい)
- 発達的要因:ことば・運動・認知などが急速に発達する時期の影響
- 環境要因:周囲との関係や生活上の出来事(あくまで“きっかけ”になりうる程度)
つまり、親のしつけや関わり方が「原因」ではありません。自分を責める必要はまったくないのです。そして前述のとおり、発症した子の多くは自然に回復していきます。
親の接し方のコツ|NG例とOK例

家庭での関わり方は、回復を急かすことより「安心して話せる環境づくり」が中心です。吃音臨床ガイドラインなどでも、聞き手の姿勢が重視されています。
| 場面 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
| 話しているとき | 「ゆっくり言って」「言い直して」と促す | 最後まで急かさずゆっくり聞く |
| 言葉につまったとき | 先回りして代わりに言う | 待って、話そうとする気持ちを受け止める |
| 話し方への反応 | 「またどもってる」と指摘する | 話し方ではなく“話の内容”に反応する |
| 会話のテンポ | 早口でたたみかける | 大人がゆっくり・ゆったり話す |
ポイントは、「話し方」ではなく「話した内容」に耳を傾けること。「上手に言えたね」より「そうなんだ、楽しかったんだね」と、伝えたかった気持ちに反応してあげましょう。子どもが「自分の話を聞いてもらえる」と感じられる安心感が何より大切です。なお、養育者が関わる「リッカム・プログラム」など専門的な支援法もあり、必要に応じて専門家のもとで取り組めます。
こんなときは相談を|相談先と受診の目安

多くは自然に回復しますが、次のようなときは、早めに専門家に相談すると安心です。早期の相談は「大げさ」ではありません。
- 吃音が半年〜1年以上続いている、または強くなってきた
- 本人が話すことを嫌がる・避ける、自信をなくしている様子がある
- からかわれるなどで困っている
- 就園・就学を控えていて心配
相談先としては、小児科、言語聴覚士(ST)のいる医療機関、自治体の「ことばの教室」、発達支援センター、保健センターの育児相談などがあります。どこに相談すればよいか分からないときは、まずかかりつけの小児科や自治体の窓口に聞いてみましょう。
※本記事は医療・専門的支援の助言に代わるものではありません。気になることがある場合は、小児科や言語聴覚士などの専門機関に相談してください。
よくある誤解・NG例

- 「親の育て方・接し方が原因」と思い込む:吃音は体質的要因が大きく、育て方が原因ではありません。自分を責めないでください。
- 「言い直させれば直る」と考える:言い直しや「ゆっくり」の指示は、かえって本人を緊張させ、逆効果になることがあります。最後まで聞く姿勢が大切です。
- 「指摘して意識させた方がいい」と思う:話し方を指摘すると、話すことへの不安が強まることがあります。話し方より内容に反応し、安心できる雰囲気をつくりましょう。
よくある質問(FAQ)

Q1. いつから心配すればいいですか?
2〜5歳ごろに始まる吃音の多くは自然に回復します。ただし、半年〜1年以上続く・強くなる・本人がつらそう、という場合は早めに相談を。迷ったら早めでかまいません。
Q2. 保育園や幼稚園に伝えたほうがいいですか?
伝えておくと、園でも「最後までゆっくり聞く」「からかいに配慮する」など、家庭と同じ姿勢で関わってもらいやすくなります。先生と共有するのはおすすめです。
Q3. つまったときに叱ってもいいですか?
叱るのは避けましょう。話し方を責められると、話すこと自体が不安になります。内容を受け止め、安心して話せる雰囲気を大切にしてください。
Q4. きょうだいや友達にはどう説明すればいい?
「ことばが出にくいときがあるけど、最後まで聞いてあげてね」と、シンプルに伝えれば十分です。からかわずに待つことを、まわりの子にもお願いしましょう。
Q5. 治療や専門的な支援は受けられますか?
言語聴覚士による支援や、養育者が関わる「リッカム・プログラム」などがあります。必要かどうかも含め、医療機関やことばの教室で相談できます。
まとめ
吃音は、幼児期にとてもよくみられる現象で、3歳児の約11人に1人が経験し、その多くは自然に回復していくとされています。原因の大半は体質的なもので、親の育て方のせいではありません。
家庭でできる最良のサポートは、「話し方」ではなく「話した内容」に耳を傾け、急かさず最後までゆっくり聞くこと。半年〜1年以上続く、本人がつらそう、という場合は、小児科やことばの教室、言語聴覚士などに早めに相談を。安心して話せる環境を、まわりの大人みんなで整えてあげましょう。