この記事の主な参照ソース
- 生徒指導リーフ Leaf.18「自尊感情」?それとも、「自己有用感」?(文部科学省 国立教育政策研究所) — 自己肯定感・自尊感情・自己有用感の用語整理
- 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 令和5年度(こども家庭庁) — 自己肯定感の国際比較データ
- 青少年の体験活動等に関する意識調査 令和元年度(国立青少年教育振興機構) — 体験活動と自己肯定感の関連
- 子どもの自己肯定感がグンと高まる声かけと接し方のコツ(ベネッセ教育情報) — プロセスを認める声かけ
- 児童期・思春期・青年期における自己肯定感に影響する要素と高め方(認定NPO法人カタリバ) — 学童期以降の関わり
「もっと自信を持ってほしいのに、すぐ『どうせ無理』って言うんです」「ほかの子と比べちゃいけないと分かっているのに、つい口に出てしまって……」
みなさんは、わが子と関わるなかでこんなふうにモヤモヤした経験はありませんか?
「自己肯定感」という言葉はすっかり広まりましたが、いざ「どうやって育てるの?」となると、はっきり答えるのは意外と難しいですよね。情報もたくさんありすぎて、何を信じればいいのか迷ってしまいます。
この記事では、自己肯定感とは何かという用語の整理から、年齢別の関わり方、育てる声かけと避けたい声かけ、やりがちなNG例、そして親自身を追い詰めないための心構えまで、公的機関の調査や専門家の見解をもとに整理しました。先に大事なことをお伝えしておくと、「これだけやれば必ず高まる」という魔法はありません。けれど、日々の関わりの方向性をそろえることはできます。肩の力を抜いて読み進めてくださいね。
そもそも自己肯定感とは?自尊感情・自己有用感との違い

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まず、言葉を少し整理させてください。ここがあいまいなまま進むと、関わり方もブレてしまうんですよね。
文部科学省の国立教育政策研究所がまとめた資料では、「自尊感情(self-esteem)」は、自分を価値ある人間だと感じる肯定的な自己評価を指し、学校教育などで使われる「自己肯定感」とほぼ同義として整理されています。つまり、ざっくり言えば「自分を肯定的に受け止められる感覚」のことです。
一方で、同じ資料は「自己有用感」という言葉を区別して紹介しています。
自己有用感は、「他人の役に立った」「人から喜んでもらえた」など、相手の存在があってこそ生まれる点で、自尊感情や自己肯定感とは性質が異なる——と国立教育政策研究所は説明しています。
ここがポイントなんですが、自己有用感は「自分ひとり」では育ちにくく、誰かとの関わりの中で「役に立てた」と実感することで積み上がっていきます。だからこそ、家庭での受け止めだけでなく、友だちや周囲との関わりも大切になってくるんですね(学童期の関わりで後述します)。
この記事では基本的に「自己肯定感」という言葉を使いますが、「人の役に立てた経験」も自己肯定感を支える大事なピース、というイメージで読んでいただければ大丈夫です。
なぜ今、子どもの自己肯定感が注目されるの?

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「自己肯定感、自己肯定感って言うけど、そんなに大事なの?」と感じる方もいるかもしれません。注目される背景には、いくつかの公的データがあります。
こども家庭庁が行った「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」では、こんな結果が報告されています。
- 「今の自分が好きだ」に「そう思う」と答えた日本の割合は 17.5%。アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンと比べて最も低い結果でした
- 「自分自身に満足している」に肯定的に答えた日本の割合は 57.4% で、調査国の中で最も低く、他の国はいずれも7割以上でした
……数字だけ見ると、ちょっとドキッとしますよね。ただ、これは13〜29歳を対象にした調査で、「日本の子は自信がない」と決めつけるためのものではありません。国によって謙遜の文化や回答の傾向も違うため、数字をそのまま優劣として読むのは禁物です。それでも「自分を肯定的に受け止める感覚を、社会全体で育てていきたい」という関心が高まっている背景は伝わってきます。
なぜ大事にされるのかというと、同じ調査では自分に満足している子ども・若者ほど、生活満足度や幸福感といった主観的なウェルビーイングの指標が高い傾向もみられているからです(あくまで「傾向」で、高めれば必ず幸せになる、という因果ではありません)。
自己肯定感は「特別なこと」より日常で育つ
「じゃあ何か特別な習い事を……」と思いがちですが、ヒントは案外、日常にあります。
国立青少年教育振興機構の調査(令和元年度)では、社会経済的な背景の違いにかかわらず、自然体験が多い子供ほど自己肯定感が高く、自立的な行動習慣が身についている傾向が報告されています。
キャンプや外遊びのような大がかりなものでなくても、近所の散歩、虫探し、料理のお手伝い——こうした「自分でやってみた」という体験の積み重ねが、自己肯定感を支える土台になっていく、と考えられています。
お金をかけることが本質ではない、というのは、ちょっとホッとする視点かもしれません。
年齢別・自己肯定感を育てる関わり方(乳児期〜学童期)

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自己肯定感の土台になる関わりは、年齢によって少しずつ重心が変わります。とはいえ、貫いているのは「ありのままを受け止める」という一本の軸。発達には大きな個人差があるので、月齢・年齢はあくまで目安として見てくださいね。
年齢別・関わり方のめやす
| 時期 | キーワード | 親の関わりのめやす | 育っていく感覚 |
|---|---|---|---|
| 乳児期(0〜1歳ごろ) | 安心・愛着 | 肌に触れる・目線を合わせる・たくさん言葉をかける | 「自分は守られている」という安心感 |
| 幼児期前半(1〜3歳ごろ) | 自分でやりたい | 小さな「できた」を一緒に喜ぶ・待つ・選ばせる | 「自分でできた」という手応え |
| 幼児期後半(3〜6歳ごろ) | 気持ちを受け止める | 興味を質問で広げる・気持ちに共感する | 「気持ちを分かってもらえる」安心 |
| 学童期(6〜12歳ごろ) | 認められる・役に立つ | 努力や工夫を具体的に認める・人の役に立つ経験を支える | 「自分には価値がある」という実感 |
乳児期は、ベネッセ教育情報の記事でも、「肌に触れる」「目線を合わせる」「たくさん言葉をかける」という関わりが、安心感と愛着形成の土台になるとされています。「この人は自分を受け止めてくれる」という感覚が、すべての出発点なんですね。
幼児期は、自分でやりたい気持ちがぐんと育つ時期。うまくいかなくても、結果より「自分でやってみた」プロセスを一緒に喜ぶことが、手応えにつながります。気持ちを「そうだったんだね」と受け止めてもらえる経験も、安心の土台になります。
学童期になると、家庭の外の世界が広がります。認定NPO法人カタリバの解説では、学校生活の充実度や、自分の気持ちを話せる人間関係があることが、この時期の自己肯定感に影響するとされています。さらに、友だちを助けたり人の役に立ったりする経験は、他者との関係の中で「自分には存在価値がある」と感じることにつながるとされています。最初の章で紹介した自己有用感が、ここで効いてくるわけです。
自己肯定感を育てる声かけ/避けたい声かけ

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毎日の声かけは、いちばん身近で、いちばん積み重なる関わりです。ここでは「方向性」を比較表で整理してみます。
育てる声かけ vs 避けたい声かけ
| 場面 | 育てやすい声かけ | 避けたい声かけ | 理由 |
|---|---|---|---|
| 頑張ったとき | 「最後までやり切ったね」「工夫したね」 | 「頭がいいね」「才能あるね」(能力だけ) | 過程を認めると次の挑戦につながりやすい |
| 失敗したとき | 「やってみたのがえらいよ」「どこが難しかった?」 | 「だから言ったでしょ」 | 失敗を責めないことで挑戦が続けやすい |
| できたとき | 「自分で決めたんだね」 | 「ママの言う通りにできたね」 | 自分で選んだ実感が自信につながる |
| 比べたくなったとき | 「前のあなたよりできてるね」 | 「お兄ちゃんはできたよ」 | 他人比較は自信を傷つけやすい |
ベネッセ教育情報の記事では、結果よりも頑張った「過程(プロセス)」に注目して認めると、子どもは努力を認められたと感じ、次も頑張る自信につながりやすいと紹介されています。
この「プロセスを見る」関わりには、有名な研究の裏づけもあります。
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授らの研究では、能力(知能)を褒められた子は難しい問題のあとに成績が落ち、努力を褒められた子は成績を伸ばしたと報告されています(東洋経済オンラインの紹介より)。能力中心の称賛は「失敗したら賢くないと思われる」というプレッシャーになり、挑戦を避けやすくなる、と考えられています。
もちろん、これは海外の研究の一例で、日本の子ども全員に必ず当てはまるわけではありません。それでも「何ができたか(結果)」だけでなく「どう取り組んだか(過程)」に目を向ける——この方向性は、多くの専門家がすすめる共通項です。
「ありのまま」を言葉にする
特別なテクニックがなくても大丈夫。KUMONの解説コラムでも、子どものありのままの状態を肯定して受け入れることが自己肯定感の土台になるとされています。
- 「おはよう、今日もよく寝られた?」と存在をそのまま気にかける
- 子どもの言葉を「○○だったんだね」とそのまま繰り返す
- 何かを成し遂げたときだけでなく、普段から声をかける
「すごいね」を増やすより、「見ているよ」が伝わることのほうが、ずっと土台になります。
やりがちだけど逆効果になりやすい3つの関わり

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先に断っておきたいのですが、ここで挙げるのは「やったら子どもがダメになる」という脅しではありません。誰でもつい、やってしまいがちな関わりです。気づいて少し方向を変えるだけで十分。完璧を目指さなくて大丈夫です。
① 結果だけで評価してしまう
テストの点や順位など、結果だけを褒めたり叱ったりする関わりです。ベネッセ教育情報の記事でも、結果だけを褒めることは避けたい関わりの一つとして挙げられています。結果は本人にもコントロールしきれないもの。過程や取り組み方に目を向けると、子どもは「次もやってみよう」と思いやすくなります。
② 他人やきょうだいと比較してしまう
「お兄ちゃんはできたのに」「○○ちゃんはもう読めるって」——つい出てしまう比較ですが、これも避けたい関わりとされています。比べる相手は、他人ではなく「過去のその子自身」に。「先月より字がきれいになったね」のように、本人の成長を物差しにすると、自信につながりやすくなります。
③ 過干渉・先回りしてしまう
良かれと思って、つい手や口を出しすぎてしまうこと、ありますよね。ベネッセ教育情報の専門家監修記事では、親が先回りして手を出しすぎると、子どもが自分で考え試行錯誤する機会が減り、主体性が育ちにくくなる要因になりうると指摘されています。
同記事は、子どもの「モタモタ」は試行錯誤・成長の途中であり、すぐ手を出さずに見守る関わりが大切だとしています。合言葉は「手を出さずに見守ること」。失敗しても大けがにならない場面では、ぐっとこらえて任せてみる——これも立派な関わりです。
「①結果偏重」「②比較」「③過干渉」、どれも愛情の裏返しで起きるもの。気づいたときに「あ、いまちょっとやりすぎたな」と思えたら、それで十分前進です。
親が完璧でなくていい|心配なときの相談先

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ここまで読んで、「全部できている自信がない……」と感じた方こそ、最後まで読んでくださいね。いちばん伝えたいことです。
子どもの自己肯定感を育てたいなら、まず親が自分を追い詰めないこと。 KUMONの解説コラムでも、親自身が「こうでなければ」に縛られず、完璧を目指しすぎないことが、結果的に子どもへの余裕のある関わりにつながるとされています。
イライラしてつい強い言葉をかけてしまった日もあるでしょう。でも、自己肯定感は「一度の失敗」で決まるものではなく、日々の関わりの積み重ねで少しずつ育っていくものです。親が疲れているときは、ケアの手を抜いてもいい。むしろ、親自身が「自分も大事にしていい」と思えていることが、子どもへのいちばんのお手本になります。
こんなときは、ひとりで抱えずに相談を
発達には大きな個人差があります。次のようなときは、家庭だけで抱え込まず、専門機関に相談するのも大切な選択肢です。
- 子どもの落ち込みや不安が強く、長く続いていると感じるとき
- 食欲・睡眠・登園/登校など、生活面に影響が出ているとき
- 親自身がつらく、子どもへの関わりに余裕が持てないとき
こども家庭庁は、地域の子育て支援や相談窓口を案内しており、保護者が抱え込まずに相談することを推奨しています。かかりつけの小児科、自治体の子育て支援センター、保健センターなども、気軽に頼れる窓口です。
「相談する=親として失格」では決してありません。むしろ、早めに誰かに話すこと自体が、子どもと自分を守る関わりです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自己肯定感と自尊感情は違うものですか?
文部科学省の国立教育政策研究所の資料では、「自尊感情(self-esteem)」と学校教育で使われる「自己肯定感」はほぼ同義として整理されています。どちらも「自分を価値ある存在として肯定的に受け止める感覚」を指します。一方で「自己有用感(人の役に立てたという感覚)」は、相手の存在があってこそ生まれる点で性質が異なる、と区別されています。
Q2. 自己肯定感が低くなる原因は何ですか?
原因は一つではなく、さまざまな要因が重なると考えられています。専門家の見解として、結果だけで評価される・他人と比べられる・過干渉で自分で決める機会が少ないといった関わりが続くと、自信を持ちにくくなる要因になりうると指摘されています。ただし「親のせい」と一方的に決まるものではありません。気づいたところから関わりを少し見直していけば大丈夫です。
Q3. たくさん褒めれば自己肯定感は高まりますか?
「たくさん褒めればいい」とは限りません。ベネッセ教育情報の記事では、結果だけを褒める・親がコントロールするために褒める・他人と比べて褒めるのは避けたいとされています。褒める量より、頑張った過程に目を向ける・存在そのものを認めることが土台になります。
Q4. 何歳から関わりを意識すればいいですか?
特定の「正解の年齢」はなく、乳児期からの日々の関わりが土台になります。乳児期はスキンシップと声かけ、幼児期は自分でやる手応えと気持ちの受け止め、学童期は努力を認めることや人の役に立つ経験——というように、年齢で重心が少しずつ変わります(本文の年齢別テーブルを参照)。発達には個人差があるので、あくまで目安として捉えてください。
Q5. 親自身の自己肯定感が低くても、子どもを育てられますか?
大丈夫です。完璧な親である必要はありません。KUMONの解説でも、親自身が「こうでなければ」に縛られすぎないことが、子どもへの余裕のある関わりにつながるとされています。親が自分を大事にする姿そのものが、子どもへのよいお手本になります。つらいときは、ひとりで抱え込まず相談先を頼ってください。
Q6. 体験や習い事はやっぱり必要ですか?
高価な習い事が必須というわけではありません。国立青少年教育振興機構の調査では、社会経済的な背景にかかわらず、自然体験が多い子供ほど自己肯定感が高い傾向が報告されています。外遊び・散歩・お手伝いなど、お金をかけなくてもできる「自分でやってみた」という体験の積み重ねが土台になります。
Q7. どんなときに専門機関へ相談すればいいですか?
子どもの落ち込みや不安が強く長引くとき、生活面(食欲・睡眠・登園や登校など)に影響が出ているとき、親自身に余裕が持てないときは、家庭だけで抱えずに相談するのがおすすめです。こども家庭庁が案内する地域の子育て支援・相談窓口や、かかりつけの小児科、自治体の保健センター・子育て支援センターなどを頼ってください。
参考文献
- 生徒指導リーフ Leaf.18「自尊感情」?それとも、「自己有用感」? — 文部科学省 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター
- 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度) — こども家庭庁
- 青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査) — 独立行政法人 国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター
- 子どもの自己肯定感がグンと高まる声かけと接し方のちょっとしたコツ【体験談あり】 — ベネッセ教育情報
- 子どもの自己肯定感とは?高める方法、親の接し方や心構え — KUMON Harmonies(公文教育研究会)
- 児童期・思春期・青年期における自己肯定感に影響する要素と高め方 — 認定NPO法人カタリバ
- 子供の知能をほめると成績が下がる驚くべき理由 — 東洋経済オンライン(キャロル・ドゥエックの研究紹介)
- 「これって過干渉?」は誰もが持つ悩み。合言葉は「手を出さずに見守ること」 — ベネッセ教育情報(専門家監修)
- 子どもの心の健やかな育ち(子育て支援・相談窓口) — こども家庭庁
※本記事は医療・専門的なアドバイスではありません。お子さまの様子で気になることがある場合は、かかりつけ医や自治体の相談窓口など専門機関にご相談ください。