この記事の主な参照ソース
- 令和3年社会生活基本調査 結果の要約(総務省統計局) — 家事関連時間の実測
- 6歳未満の子供を持つ世帯の生活時間(総務省統計局) — 育児時間の内訳
- 統計Today No.190 家事関連時間の男女の差(総務省統計局) — 生活時間からみた差
- 産後ケア事業を利用したい方(こども家庭庁) — 使える支援
「自分の時間なんて、そのうち取れるようになるよ」と言われて、そのうちがいつなのか分からないまま2年が過ぎた。
夜、子どもが寝てからスマホを触っていたら1時になっていて、翌朝の自分に呪われる。……こういう夜、ありませんか。
「時間がない」という感覚は、気の持ちようではなく実際に時間が足りていないことが多いです。総務省の社会生活基本調査には、その数字が出ています。
数字で構造を見てから、30分を確保する手順に落とします。精神論ではなく、時間の置き場所の話をします。
統計に出ている「時間が足りない」の実体

総務省の令和3年社会生活基本調査によると、6歳未満の子供を持つ世帯の家事関連時間は、夫が1時間54分、妻が7時間28分です。2016年と比べると、夫は31分の増加、妻は6分の減少となっています。
内訳を見ると、夫の家事時間は13分の増加、育児時間は16分の増加と大きく増えました。一方で妻の家事時間は9分の減少、育児時間は9分の増加です。
育児時間の内訳はさらに具体的です。
| 育児の内容 | 夫 | 妻 |
|---|---|---|
| 乳幼児の身体の世話と監督 | 28分 | 2時間3分 |
| 乳幼児と遊ぶ | 27分 | 56分 |
| 子供の送迎移動 | 6分 | 22分 |
この表を見ると、差の大きさが分かります。「乳幼児の身体の世話と監督」で1時間35分の差があります。
そして注目したいのは、妻の育児時間も9分増えているという点です。夫の時間が増えても、妻の時間は減っていない。家事が9分減った分だけ、育児が9分増えている構造になっています。
つまり、総量が減っていないから自分の時間が生まれないわけです。「分担が進んだのに楽になった感じがしない」という感覚には、根拠があります。
自分時間が消える3つの構造

数字から読み取れる構造を3つに整理します。
1. 「監督」の時間が細切れで拘束している 統計の「身体の世話と監督」という項目名がヒントです。見ているだけの時間が長い。何もしていないのに離れられない時間は、休息にも作業にもなりません。
2. タスクの総量が減っていない 家事が減っても育児が増えれば、合計は変わりません。「協力してもらう」だけでは、自分の時間は増えないことがあります。
3. 決定の負荷が偏っている 「今日の夕飯」「明日の持ち物」「予防接種の予約」を誰が決めているか。実行より決定のほうが疲れます。 ここが偏っていると、手を動かしてもらっても消耗は残ります。
ここがポイントなんですが、自分時間を作る打ち手は「手伝ってもらう」ではなく「総量を減らす」または「決定を渡す」の方向に置いたほうが効きます。
30分を確保する4つの手順

いきなり2時間を作ろうとすると失敗します。まず30分です。
1. 1週間、時間を記録する 細かくなくて構いません。「7:00 起床・朝食」「12:00 昼寝・洗濯」程度。記録すると、削れる場所が見えます。 「気づいたら30分スマホを見ていた」も含めて書きます。
2. 削るタスクを1つだけ決める 全部見直すと続きません。1つに絞ります。候補になりやすいのは、こういうものです。
| 削る候補 | 具体的なやり方 |
|---|---|
| 献立を考える時間 | 曜日ごとに固定メニューを決める |
| 洗濯物をたたむ時間 | 下着と靴下は「たたまない箱」に入れる |
| 食器を洗う時間 | 食洗機か、朝まで放置する日をつくる |
| 買い物に行く時間 | 週1のネットスーパーに切り替える |
| 部屋を片づける時間 | 1日1回のリセットだけにして、日中は片づけない |
3. 30分の枠を先に予約する 空いた時間に「あとで休もう」は、まず消えます。カレンダーに30分の枠を書きます。 子どもの昼寝中、寝かしつけ後の21:00〜21:30など。
4. その枠を家族に宣言する 「土曜の朝9時から30分、出かけてくる」と口に出します。黙って確保した時間は、たいてい奪われます。
我が家でやって効いたのは、2番の「たたまない箱」でした。1日10分でも、週で70分になります。そのぶんを自分時間に回すという置き換えができると、続きやすくなります。
家族との交渉の進め方

「もっと手伝って」は、うまくいかないことが多い言い方です。具体的に何を渡すかを決めるほうが進みます。
1. 数字を共有する 社会生活基本調査の数字(妻7時間28分/夫1時間54分)は、感情ではなく統計です。「うちは特別に不公平」ではなく「全国的にこうなっている」という話から始めると、責める形になりにくくなります。
2. タスクを「決定」と「実行」に分ける
| タスク | 決定 | 実行 |
|---|---|---|
| 夕食 | 何を作るか決める | 買う・作る |
| 保育園の持ち物 | 何が必要か把握する | 用意する |
| 予防接種 | 時期を管理して予約する | 連れていく |
| 子どもの服 | サイズと季節を判断する | 着せる・洗う |
3. 決定ごと渡す項目を1つ決める 「金曜の夕食は決定から任せる」のように、決定を含めて渡すのがポイントです。実行だけ渡すと、指示を出す負荷が残ります。
最初はうまくいかないはずです。献立が3週連続でカレーになるかもしれません。それでも決定の負荷が1つ減るほうが、長期的には効きます。
使える公的サービス

「自分で何とかする」の前に、制度を確認する価値があります。
産後ケア事業 こども家庭庁の案内では、出産後1年以内のママと赤ちゃんを対象に、心身のケアや育児のサポート等を行う事業とされています。母子保健法の改正により市町村の努力義務として規定され、利用期間は原則7日以内とされています。宿泊型、日帰り型、訪問型などの形があり、自治体によって内容が異なります。
| サービス | 対象・内容 |
|---|---|
| 産後ケア事業 | 出産後1年以内。心身のケアと育児サポート |
| 一時預かり・一時保育 | 保育所等での一時的な預かり。要件は自治体・施設ごと |
| ファミリー・サポート・センター | 地域の会員による預かりや送迎。事前登録が必要 |
| 子育て支援センター・つどいの広場 | 相談と交流。予約不要の場所も多い |
| 産婦健診 | 産後2週間、産後1か月など。心身の状態を確認する場 |
産婦健診は「相談していい場」です。こども家庭庁の資料では、産後の健康診査は母体の身体的機能の回復や授乳状況及び精神状態の把握等を行うものと位置づけられています。眠れていない、気持ちが沈むといったことを話してよい場面です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、年齢にあわせた十分な睡眠時間の確保を目指すことを示しています。自分時間を睡眠に充てる選択も、立派な使い方です。
よくある誤解とNGパターン

1. 「空いた時間に休もう」とする 空き時間は発生しません。先に枠を予約します。
2. 全部のタスクを一度に見直す 続きません。削るのは1つだけにします。
3. 「手伝って」と頼むだけで終わる 実行だけ渡すと指示の負荷が残ります。決定ごと渡す項目を決めます。
4. 睡眠時間を削って自分時間にする 短期的には作れますが、翌日の消耗が増えます。睡眠ガイドも十分な睡眠時間の確保を目指すことを示しています。
5. 預けることに罪悪感を持つ 産後ケア事業や一時預かりは、そのために用意されている制度です。使う前提で設計されています。
6. 「もっとつらい人がいる」で自分の状態を軽く見る 比較で判断すると相談が遅れます。眠れない、気持ちが沈むといった状態は、それ自体が相談の理由になります。
こんなときは相談を

次のような状態が続いているときは、我慢の対象ではなく相談の対象です。
- 眠れない、眠っても回復した感じがしない
- 気持ちが沈む日が2週間以上続いている
- 子どもへの気持ちが向かない、かわいいと思えない
- 食欲がない、体重が落ちた
- 涙が止まらない日がある
- 自分を責め続けている
相談先は、産婦健診、市町村の母子保健担当(保健センター)、かかりつけの産婦人科や内科です。こども家庭庁の資料では、産後ケア事業は産婦の心身の不調や産後うつ等を防ぐために心身のケアや育児サポートを行うものと位置づけられています。
「相談するほどではない」と思う段階が、いちばん相談しやすい段階です。産婦健診や乳幼児健診のついでに一言伝えるだけでも構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 6歳未満の子がいる家庭の家事関連時間はどのくらいですか?
令和3年社会生活基本調査では、夫が1時間54分、妻が7時間28分です。2016年と比べて夫は31分増加、妻は6分減少しています。
Q2. 夫の育児時間は増えているのに、楽になった感じがしません。
同じ調査では、妻の家事時間は9分減った一方で育児時間は9分増えており、総量が減っていない構造が見えます。分担が進んでも合計が変わらなければ、自分の時間は生まれにくくなります。
Q3. まず何から始めればいいですか?
1週間の時間を記録して、削るタスクを1つだけ決めることです。全部を見直すと続きません。そのうえで30分の枠を先にカレンダーに予約します。
Q4. 家族に分担を頼むとき、どう伝えればいいですか?
「手伝って」ではなく、決定を含めて渡す項目を1つ決めるのが進みやすい形です。統計の数字を共有すると、個人を責める話になりにくくなります。
Q5. 産後ケア事業は誰が使えますか?
こども家庭庁の案内では、出産後1年以内のママと赤ちゃんが対象で、心身のケアや育児のサポート等を行う事業とされています。利用期間は原則7日以内で、内容は自治体によって異なります。
Q6. 子どもを預けることに抵抗があります。
産後ケア事業、一時預かり、ファミリー・サポート・センターは、保護者が休息や用事の時間を確保するために用意されている制度です。使う前提で設計されているものなので、抵抗の理由にはなりません。
まとめ
- 6歳未満の子がいる世帯の家事関連時間は妻7時間28分/夫1時間54分(令和3年社会生活基本調査)
- 育児時間の内訳では「身体の世話と監督」で1時間35分の差
- 夫の時間が増えても妻の総量は減っていない。自分時間が生まれにくい構造
- 打ち手は「手伝ってもらう」より「総量を減らす」「決定を渡す」
- 手順は記録する → 削るタスクを1つ決める → 30分の枠を予約する → 家族に宣言する
- 睡眠を削らない。睡眠に充てるのも正しい使い方
- 産後ケア事業(出産後1年以内・原則7日以内)など制度を先に確認
- 眠れない、気持ちが沈む日が続くなら相談の対象
自分時間は「余ったら取るもの」ではなく、先に置き場所を決めるものです。30分の枠を1つ、カレンダーに書いてみてください。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください