この記事の主な参照ソース
- 令和3年社会生活基本調査 結果の概要(総務省統計局) — 家事関連時間の4区分内訳
- 令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査(内閣府男女共同参画局) — 家庭マネジメントの分担
- 子育て世帯訪問支援事業について(こども家庭庁) — 自治体の家事・育児支援
- 法改正のポイント(厚生労働省 育児休業制度特設サイト) — 2025年施行の両立支援制度
総務省の令和3年社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもがいる世帯の1日あたりの育児時間は、夫が1時間5分、妻が3時間54分。家事は夫が30分、妻が2時間58分でした。
この数字だけを見れば、話は簡単そうに思えます。足りない側が数時間ぶん引き受ければいい。ところが実際に分担を決めようとすると、「何を」「どこまで」渡すのかが決まらないまま、いつのまにか前と同じ形に戻っている——そんな経験はありませんか。
分担が戻ってしまう原因は、やる気でも相手の性格でもないことが多いです。渡しているのが「作業」だけで、その手前にある「気づく・段取りする・覚えておく」が渡っていないからです。
この記事では、時間を足し算で割る決め方ではなく、タスクを棚卸しして担当ごと引き渡す手順を整理します。話し合いの切り出し方と、家庭の外に頼れる制度もあわせて紹介します。
数字で見ると、差は「どこ」にあるのか

総務省統計局は、家事・介護看護・育児・買い物の4つを合わせて「家事関連時間」と呼んでいます。この4つに分けて見ると、差がどこに集中しているかがはっきりします。
| 区分 | 夫 | 妻 | 差 |
|---|---|---|---|
| 家事 | 30分 | 2時間58分 | 2時間28分 |
| 育児 | 1時間5分 | 3時間54分 | 2時間49分 |
| 買い物 | 18分 | 33分 | 15分 |
| 介護・看護 | 1分 | 3分 | 2分 |
| 家事関連 合計 | 1時間54分 | 7時間28分 | 5時間34分 |
※令和3年社会生活基本調査(週全体、夫婦と子供の世帯、6歳未満の子供を持つ世帯)。「差」は各数値の差を計算したもの
買い物や介護・看護の差は15分と2分です。つまり、買い物の当番を代わっても分担はほとんど動きません。動かしたいのは育児と家事のほうです。
もう少し引いて見ると、男女全体の家事関連時間は2021年で男性51分、女性3時間24分。男女の差は2時間33分で、2001年の3時間3分から30分縮まりましたが、統計局はこれを「依然として差は大きい」と書いています。
同じ調査は、6歳未満の子がいる世帯の夫について家事時間・育児時間ともに増加傾向で、2021年はいずれも大きな増加だったと報告しています。一方の妻は、2016年に初めて育児時間が家事時間を上回り、2021年はその差がさらに広がりました。片方が増えても、もう片方が減るとは限らない。20年ぶんの数字が示しているのは、その形です。
ここに出てくる偏りは平均の話です。多く担っているのがどちらであっても、このあとの手順はそのまま使えます。
偏っているのは作業より「管理」のほう

内閣府男女共同参画局の令和元年度「家事等と仕事のバランスに関する調査」は、家事を作業単位ではなく「家事・家庭マネジメント」という切り口でたずねています(インターネット調査、2019年12月実施、8,151件回収)。7項目と回答の傾向はこうです。棚卸しの出発点に、そのまま使えます。
| 家庭マネジメントの項目 | 調査で多かった回答 |
|---|---|
| 食材や日用品の在庫の把握 | 「妻」が6割超。「どちらかというと妻」と合わせて8割超 |
| 食事の献立を考える | 「妻」が6割超。「どちらかというと妻」と合わせて8割超 |
| 育児・子どもの教育 | 「妻」「どちらかというと妻」に寄る |
| 家族の予定を調整する | 「妻と夫が同程度」が26.6%と、比較的分かれている |
| 親や親族との付き合い | 「妻と夫が同程度」が36.8%で、7項目のなかでは最も分かれている |
| ごみを分類し、まとめる | 「夫」10.0%+「どちらかというと夫」8.8%と、他項目より夫側が多い |
| 家計管理・運営 | 「夫」10.2%+「どちらかというと夫」8.6%と、他項目より夫側が多い |
※内閣府男女共同参画局「家事等と仕事のバランスに関する調査」(夫婦合算 n=10,972)
報告書は、7項目のいずれについても「妻」「どちらかというと妻」の合計がおおむね5割以上だったとしています。夫側が比較的多い「家計管理・運営」でも2割弱です。
育児のほうはもっとはっきりしています。末子が0〜2歳の夫婦で、「育児に関する予定の管理」「育児に関する情報収集」を「ほぼ毎日・毎回する」と答えたのは妻が5割弱、夫は1割強。どちらの項目でも夫の5割近くが「まったくしない」と答えています。末子が3歳〜就学前になると、予定の管理は妻34.4%・夫10.3%、情報収集は妻31.1%・夫9.0%。
ここがポイントなんですが、この2項目はどちらも「体を動かす作業」ではありません。予防接種の時期を覚えている、行事の持ち物を調べる、来週の予定を頭に置いておく。目に見えないぶん、分担表からもこぼれ落ちます。これが「名もなき家事」「見えない育児」と呼ばれているものの中身です。
意外なのは、分担の割合そのものは夫婦であまりズレていない点です。同調査では、家事・育児の分担割合について妻は7割程度、夫は3割程度と答えています。項目ごとの認識は5%ほどズレますが、大枠の見立ては一致している。つまり多くの家庭では、「相手が現状を分かっていない」のではなく「決め方が決まっていない」という段階にいるわけです。
分担を決め直す4つのステップ

いきなり全部を決めようとすると、たいてい途中で止まります。順番はこうです。
1. タスクを書き出す
紙でもスマホのメモでも構いません。大事なのは、実行だけでなく管理も1行として書くことです。「洗濯」の隣に「洗剤の残量を見て買い足す」を別の行で。「保育園の送り」の隣に「行事の日程を把握して仕事の予定を調整する」を。
2. 所要時間と発生頻度を書く
数字が入ると、感覚の言い合いになりにくくなります。書き方はこんな形です。
| タスク | 1回の時間 | 頻度 | 管理(気づく・段取り・記憶)が要るか |
|---|---|---|---|
| 連絡帳を書く | 5分 | 毎日 | 要る(体温と前日の様子を覚えておく) |
| 翌日の持ち物をそろえる | 10分 | 毎日 | 要る(週の予定と在庫の把握) |
| 献立を決めて買い物リストを作る | 15分 | 週2〜3回 | 要る(在庫と好みの把握) |
| 洗濯を回してたたむ | 30分 | 毎日 | 要らない(作業のみ) |
| 予防接種の予約 | 10分 | 数か月に1回 | 要る(接種時期の管理) |
| 行事の把握と予定調整 | 20分 | 月1〜2回 | 要る(家族の予定調整) |
※書き方の例です。時間も頻度も家庭ごとに違うので、自分の家の数字を入れてください
3. 担当を決める — 時間で割らず、決定ごと渡す
ここが分かれ道です。「合計7時間28分だから半分ずつ」という割り方は、日々の運用でたいてい崩れます。代わりに、領域ごと丸ごと引き渡すやり方をとります。
| 作業だけ渡す | 決定ごと渡す | |
|---|---|---|
| 頼み方 | 「今日、保育園の送りお願い」 | 「平日の送りは担当。出る時間も準備の仕方も決めていい」 |
| 気づく人 | 頼む側 | 担当する人 |
| 段取りする人 | 頼む側 | 担当する人 |
| 頼む側に残る負担 | 毎回の声かけと確認 | 見直しのときだけ |
| つまずきやすい点 | 頼み忘れると止まる | やり方が違っても口を出さない練習が要る |
渡す単位は、「お風呂まわり」「平日の朝」「保育園とのやりとり」「休日の食事」のように、始まりから終わりまでが1人で完結する固まりにします。洗剤を切らしたら買うところまで含めて渡す。ここを分けると、管理だけが元の側に残ります。
4. 見直す日を決める
進級、復職、勤務時間の変更、下の子の誕生。前提が変わるたびに、いい分担も合わなくなります。月1回15分でも十分です。カレンダーに入れてしまうのが確実で、「うまくいかなくなったら話す」だと、たいてい限界まで話しません。
話し合いの切り出し方|非難を、事実と依頼に置き換える

分担の話は、切り出し方ひとつで方向が変わります。相手の人格や姿勢を評価する言い方になると、内容の話に戻れなくなるからです。
| 出やすい言い方 | 起きること | 事実と依頼で言い換えると |
|---|---|---|
| 「なんでいつも私ばっかり」 | 相手が防御に回り、分担ではなく人格の話になる | 「先週、寝かしつけは7日中6日わたしだった。半分にしたい」 |
| 「少しは手伝ってよ」 | 「手伝う側」という立場が固定される | 「お風呂まわりを、担当としてまるごと持ってほしい」 |
| 「言わなくても分かるでしょ」 | 気づく負担が減らないまま残る | 「何を持つか決めたいから、リストを一緒に見てほしい」 |
| 「前もそう言ってできてなかった」 | 過去の検証に戻り、決め直しが進まない | 「今の形だと回らなかった。曜日を変えて試したい」 |
| 「普通は◯◯するものでしょ」 | 一般論の押しつけになり、うちの事情が反映されない | 「うちは今こうしたい。理由は◯◯だから」 |
進め方も決めておくと楽です。
- 時間と場所を決める。 子どもが寝たあとの15分など。皿を洗いながらの不満の延長で始めない
- 事実から出す。 統計や1週間の記録は、感情ではなく共有できる材料になる
- 相手の制約も聞く。 勤務時間、通勤、繁忙期、通院。制約を知らないまま決めた表は守れない
- 決まったことを書いて残す。 口約束は1週間で解釈が分かれる
話し合いのゴールを「相手を納得させること」に置くと、だいたい平行線になります。ゴールは次の1か月の担当表を1枚作ることです。合意より先に、動く形を作ってしまう。
意識のほうは世代で変わりつつあります。令和5年版男女共同参画白書によると、家事・育児等を「自分が率先してすべきことである」と答えた割合は、50〜60代では女性が男性を10ポイント以上上回る一方、20代では男女差がほとんど見られませんでした。子どものいる20〜30代男性では「家事・育児時間を増やしたい」が3割。意欲と実際の時間のあいだには、まだ距離があります。
決め方でつまずきやすい5つのパターン

1. 時間をきれいに半分に割ろうとする 勤務時間も通勤も繁忙期も違うので、合計時間の折半は現実の運用と合いません。割るのは時間ではなく領域です。
2.「手伝う/手伝ってもらう」の言葉のまま決める この言い方だと、片方が主担当で片方が補助という関係が言葉に残ります。決めるときは「担当」で言い換えたほうが、あとの運用が変わります。
3. 作業だけ渡して、管理を渡さない 一番多いつまずきです。「ゴミ出しは担当」でも、収集日と分別ルールを覚えているのが別の人なら、負担は移っていません。
4. 完璧な表を作ろうとして終わらない 全タスクを網羅する前に手が止まります。まずは毎日発生するものを10行だけ書いて、動かしながら足していく。
5. 決めたあと、やり方に口を出す たたみ方が違う、着せる服が違う、寝かしつけの順番が違う。ここで口を出すと、決定権が戻ってしまい、また管理を持つことになります。安全に関わること以外は、しばらく黙って見る時間が要ります。
家庭の外に頼る|公的な支援と職場の制度

二人で割り切れない量なら、外に出すほうが早いことがあります。まず自治体側です。
| 頼り先 | 内容 | 実施主体 |
|---|---|---|
| 子育て世帯訪問支援事業 | 訪問支援員が家庭を訪問し、食事準備・洗濯・掃除・買い物の代行やサポート、育児のサポートや保育所等の送迎などを行う | 市町村(特別区を含む) |
| 産後ケア事業 | 短期入所(ショートステイ)型、通所(デイサービス)型、居宅訪問(アウトリーチ)型 | 市町村 |
| 一時預かり | 急な用事や短期のパートタイム就労のほか、リフレッシュしたい時などに、保育所などの施設や地域子育て支援拠点で預かる | 市町村 |
| ファミリー・サポート・センター | 預かりの援助を受けたい人と、援助を行いたい人との連絡・調整 | 市町村 |
| 地域子育て支援拠点 | 親子の交流や子育て相談ができる場所 | 市町村 |
子育て世帯訪問支援事業の対象は、こども家庭庁の説明では「家事・子育て等に対して不安・負担を抱えた子育て家庭、妊産婦、ヤングケアラー等がいる家庭」です。誰でも申し込める家事代行とは別のものなので、使えるかどうかは市町村の窓口で確認してください。産後ケア事業のほうは、出産後1年以内でケアを必要とする方が対象で、初産・経産は問いません。令和7年4月から「地域子ども・子育て支援事業」に位置付けられました。
職場の制度も、2025年に動きました。分担の選択肢そのものが増えるので、就業規則を一度見ておく価値があります。
- 2025年4月〜:子の看護休暇が「子の看護等休暇」になり、対象が小学3年生修了まで拡大。取得事由に感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式が追加された
- 2025年4月〜:所定外労働の制限(残業免除)を請求できる対象が、小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大
- 2025年4月〜:3歳未満の子を養育する労働者について、育児のためのテレワーク等の導入が事業主の努力義務に
- 2025年10月〜:3歳から小学校就学前の子について、始業時刻の変更/テレワーク等(月10日以上)/保育施設の設置運営等/養育両立支援休暇(年10日以上)/短時間勤務制度、の5つから2つ以上を選んで措置することが事業主の義務に
「うちの会社にはそんな制度はない」と思っていたものが、対象になっていることがあります。
こんなときは早めに相談を

分担の話し合いは、体力と気力が残っているうちにするものです。次のような状態が続いているなら、分担の前に相談を挟んでください。
- 眠れない日が続く、食欲がない、理由がはっきりしないのに涙が出る
- 子どもへの関わりがつらい、かわいいと思えない日がある
- 話し合いのたびに強い言葉が出る、物にあたる行為がある
- 分担を変えても体調が戻らない
相談先は、市町村のこども家庭センターや保健センター、かかりつけの産科・小児科です。出産後1年以内なら、産後ケア事業の居宅訪問(アウトリーチ)型という選択肢もあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 分担は時間で半分に割るのが公平ですか?
時間の折半は分かりやすい一方、勤務時間や通勤時間の違いが反映されません。この記事では、時間で割るより「お風呂まわり」「平日の朝」のように領域ごと引き渡す方法をおすすめしています。どちらが合うかは家庭によるので、まず1か月試して見直すのが現実的です。
Q2.「名もなき家事」をどう洗い出せばいいですか?
内閣府の調査でたずねられている7項目(食材や日用品の在庫の把握、食事の献立を考える、ごみを分類しまとめる、家族の予定を調整する、家計管理・運営、親や親族との付き合い、育児・子どもの教育)を出発点にすると早いです。そこに「予防接種の管理」「行事の持ち物を調べる」など、自分の家で毎日思い出していることを足していきます。
Q3. 相手が忙しくて話し合う時間が取れません。
一度で全部を決めようとすると1時間コースになります。「タスクを書き出す日」「担当を決める日」に分け、15分ずつにするほうが実現しやすいです。書き出しは各自でやって、持ち寄る形でも構いません。
Q4. 決めた担当のやり方が自分と違います。口を出していいですか?
安全に関わることは伝えてください。それ以外は、しばらく口を出さないほうが結果的に楽になります。手順に注文をつけると、判断が自分側に戻り、管理の負担も一緒に戻ってきます。
Q5. 分担を見直すタイミングはいつですか?
進級、復職、勤務時間の変更、下の子の誕生など、前提が変わったときです。それとは別に、月1回15分の定期見直しをカレンダーに入れておくと、限界が来る前に手を打てます。
Q6. 公的な家事支援は誰でも使えますか?
こども家庭庁の子育て世帯訪問支援事業は、家事・子育て等に不安や負担を抱えた家庭、妊産婦、ヤングケアラー等がいる家庭を対象としています。誰でも申し込める家事代行とは別で、実施主体は市町村です。一時預かりやファミリー・サポート・センターは対象の考え方が異なるので、市町村の窓口や子育て支援拠点で確認してください。
Q7. 統計の数字を相手に見せると、責めているように受け取られませんか?
出し方で変わります。「世の中はこうなのにあなたは」という使い方だと非難になりますが、「全国的にこの形になりやすいらしい。うちはどうする?」という共有のしかたなら、二人とも同じ側から見る材料になります。
まとめ
- 6歳未満の子がいる世帯の1日あたりの時間は、育児が夫1時間5分・妻3時間54分、家事が夫30分・妻2時間58分(令和3年社会生活基本調査)
- 差が集中しているのは育児と家事で、買い物と介護・看護の差は15分と2分。買い物を代わっても分担はほとんど動かない
- 内閣府の調査では、「育児に関する予定の管理」「情報収集」で夫の5割近くが「まったくしない」と回答(末子0〜2歳)
- 偏っているのは作業より、気づく・段取りする・覚えておくという管理の側
- 決め方はタスクの書き出し → 時間と頻度 → 領域ごと引き渡し → 月1回の見直しの4段階。渡す単位は始まりから終わりまで1人で完結する固まりにする
- 話し合いは非難ではなく、事実と依頼で。ゴールは納得ではなく「次の1か月の担当表」
- 二人で割り切れないときは、市町村の訪問支援・産後ケア・一時預かりと、2025年に広がった職場の制度を確認する
正解の分担表は家庭の数だけあります。決めた形が3か月後に合わなくなるのは、失敗ではなく前提が変わっただけです。書き出して、渡して、また直す。この記事の手順は、その1周目を回すためのものだと思ってください。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください