この記事の主な参照ソース
- 手足口病(国立成育医療研究センター) — 症状・経過・対症療法・重症化サインと受診目安
- 手足口病(厚生労働省) — 原因ウイルス・感染経路・回復後の手洗いと予防
- 手足口病(詳細版)(国立健康危機管理研究機構/旧 国立感染症研究所) — 好発年齢・流行時期・エンテロウイルス71型の合併症
- 保育所における感染症対策ガイドライン(こども家庭庁) — 登園再開のめやす
- 子どもが口を痛がるときの食事(小児科オンライン) — 食べやすい食事・避けたい食品
「手のひらと足の裏に小さな水ぶくれ……口の中も痛がって、ごはんもあまり食べてくれない」「保育園はいつまで休めばいいの? もしかして私にもうつる?」
夏になると、みなさんもこんなふうに焦った経験はありませんか。
手足口病は、夏にとても流行しやすい、子どもの代表的な感染症です。旧 国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の情報では、患者の約9割が5歳以下で、半数は2歳以下にみられるとされ、毎年7月ごろにかけて増えていきます(※流行の山は年によって前後します)。多くは数日で自然に軽くなっていく病気ですが、口の痛みで食事や水分がとりにくくなったり、ごくまれに重症化したりすることもあるため、ポイントを知っておくと安心です。
この記事では、症状と発疹の経過、おうちでの対処法、口を痛がるときの食べやすい食事、保育園の登園めやす、大人にうつるのか、似た夏風邪との違い、そして「すぐ受診すべきサイン」まで、公的機関と小児科医監修のソースをもとに整理しました。
手足口病ってどんな病気?症状と経過

手足口病は、その名のとおり手のひら・足の裏・足の甲、そして口の中に水ぶくれ(水疱)が出るのが特徴の、ウイルス性の感染症です。原因はエンテロウイルスやコクサッキーウイルスで、おしりやひざのまわりに発疹が出ることもあります。
ここがポイントなんですが、手足口病は「ひとつのウイルス」ではなく、コクサッキーウイルスA6・A16型やエンテロウイルス71型など、複数のウイルスが原因になります。だから「去年かかったのに、今年もまた……」ということが起こり得るんですね。
潜伏期間(うつってから症状が出るまで)は3〜6日ほど。発疹は数mm大で、発熱は出ないこともあり、出ても高熱になりにくい傾向があります。ただ、口の中にできた水疱や口内炎の痛みで食事や水分をいやがるお子さんは少なくなく、ここがおうちケアでいちばん気をつけたいところです。
手足口病の一般的な経過
「いつになったら治るの?」というのは、いちばん気になるところですよね。一般的な経過を整理すると、次のようになります。
| 時期 | 体の状態 | おうちでの重点 |
|---|---|---|
| 潜伏期(3〜6日) | 症状はまだ出ていないが、うつる可能性はある | 流行期は手洗いを徹底 |
| 発症期(1〜2日目) | 発熱(出ないこともある)、口の中や手足に発疹が出始める | 無理をさせず安静・水分 |
| ピーク(2〜4日目ごろ) | 口の痛みが強く、食事や水分をいやがりやすい | 食べやすいもの・水分をこまめに |
| 回復期(おおむね3〜7日) | 発疹がしだいに消えていく | ふだんの生活に少しずつ戻す |
| 数週間〜1〜2ヶ月後 | まれに爪が浮いて剥がれることがある(後述) | 慌てず様子を見る |
多くの場合、発疹はおおむね3〜7日で自然に消えていき、水疱がかさぶたを作ることはないとされています。ただし、口の痛みのつらさや食欲が戻るスピードには個人差があります。
発熱や発疹そのものより、「口が痛くて飲み食いできない」ことによる脱水のほうが心配になりやすいポイントです。次の章で、おうちでの対処と食事をくわしく見ていきましょう。
おうちでできる対処法|「治す薬」より大切なこと

赤い発疹や痛がる様子を見ると、つい「よく効く薬はないの?」と探したくなりますよね。でも、ここはまず落ち着いて。
手足口病には、有効なワクチンや特効薬はなく、特別な治療法もないとされています。治療は、つらい症状をやわらげながら自然に治るのを待つ「対症療法」が中心です。だからこそ、おうちでのケアがとても大きな意味を持ちます。
おうちケアの4本柱
- 水分をこまめに — 口が痛いと飲むのもいやがりますが、少量ずつ何度も。脱水を防ぐのが最優先です
- 食べやすいものを少しずつ — のど越しのよい、刺激の少ないものを(次の章でくわしく)
- 体を休める — 発熱や元気のなさがあるときは、無理に外出させず安静に
- 症状の変化を観察 — 熱・水分・おしっこの回数・機嫌など、いつもと違うサインに気づけるように
実はこれ、意外と見落としがちなのですが、手足口病で大事なのは「強い薬を探すこと」よりも、水分と休養を確保して、つらい時期を乗り切ることです。痛みや高熱でつらそうなときは、自己判断で市販薬を使う前に、かかりつけの小児科や薬剤師に相談すると安心です。
口の痛みが強くて水分も食事もとれない、ぐったりしている——そんなときは、おうちケアにこだわらず、後述の受診目安を参考に医療機関へ。
口を痛がるときの食事|おすすめ・避けたい食べ物

この章の主な根拠
口の中に口内炎ができると、しみて痛いので食事が進みにくくなります。「何を食べさせればいいの?」と悩むママ・パパはとても多いんですね。小児科医監修のソースをもとに、食べやすいもの・避けたいものを整理しました。
食べやすいもの・避けたいもの
| 具体例 | ポイント | |
|---|---|---|
| 食べやすい(おすすめ) | プリン、ゼリー、ヨーグルト、冷ましたおかゆ、豆腐、よく煮込んだやわらかい料理 | のど越しがよく、刺激が少ない。熱いものは冷ましてから |
| しみやすい(避けたい) | みかんなど酸味の強い果物、塩分・香辛料の強いもの、熱いもの、硬いもの、炭酸 | 傷ついた口内を刺激して痛みを悪化させやすい |
食事を進めるときの3つのコツ
- 熱いものは冷ましてから — 人肌〜常温くらいが食べやすいです
- 味つけは薄めに — 塩気や酸味を控え、出汁のうま味を活かすとしみにくくなります
- 無理に食べさせない — 基本は「食べたいものを、食べられる分だけ」。痛みがやわらげば食欲は自然に戻ってくることが多いとされています
大切なのは食事の量より水分です。食べられない日が続いても、水分がとれていれば過度に心配しすぎなくて大丈夫なことが多いですが、おしっこが減る・出ないときは脱水のサインなので、受診の目安を参考にしてください。
水分も、酸味の強いジュースだとしみることがあります。麦茶や湯ざまし、子ども用の経口補水液、ミルクや母乳など、いやがらないものを少量ずつこまめにあげましょう。
保育園はいつまで休む?登園のめやす

この章の主な根拠
「保育園、いつまで休めばいいの?」——共働き家庭にとっては切実な問題ですよね。
まず知っておきたいのは、手足口病は、インフルエンザや麻しんのように「学校保健安全法」で出席停止の期間がきっちり決められている病気ではないということです。
そのうえで、こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、登園再開のめやすが次のように示されています。
登園のめやす(保育所ガイドライン)
「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」
つまり、熱が下がり、口の痛みが落ち着いて、ふだんどおり食べられるようになっていれば、手足に発疹が少し残っていても登園できるとされることが多い、という考え方です。発症からおおむね3〜7日で症状が落ち着いてくるので、それくらいを一つの目安に考えるとよいでしょう。
登園前に確認したいこと
- 熱は下がっているか — 平熱に戻り、元気が出てきているか
- ふだんの食事がとれるか — 口の痛みで極端に食べられない状態ではないか
- 園のルール・書類の要否 — 登園許可証や意見書が必要かは園や自治体によって異なるため、必ず確認を
ここは園ごとに運用が違うところです。発症したら早めに園へ連絡し、「いつから登園できそうか」「書類は必要か」を確認しておくと、復帰がスムーズになります。最終的な登園の判断は、園・自治体のルールとかかりつけ医の指示に従ってください。
なお、手足口病は治った後も、比較的長い期間(2〜4週間)便の中にウイルスが排泄されるとされています。登園を再開しても、おむつ替えやトイレのあとの手洗いはしっかり続けることが、まわりへの広がりを抑えるうえで大切です。
大人にもうつる?家庭内でのうつりにくくする工夫

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「子どもの看病をしていたら、自分にもうつった……」というのは、実はよくある話です。手足口病は子どもの病気というイメージが強いですが、大人にもうつることがあります。
厚生労働省の情報によると、感染経路は次の3つです。
- 飛沫感染 — せき・くしゃみ・つばのしぶき
- 接触感染 — 水疱の中身や、ウイルスのついた手・物を介して
- 糞口感染 — 便に含まれるウイルスが手などを介して口に入る
家庭内でうつりにくくするには、次のような対策が基本になります。
- こまめな手洗い — とくに排便後・おむつ交換後はしっかりと
- タオルを分ける — 顔や手を拭くタオルの共有を避ける
- 排泄物・おむつを適切に処理する — 処理のあとは必ず手洗い
- 食器やスプーンの使い回しを避ける
ここで気をつけたいのが、手足口病は症状が治まった後も2〜4週間ほど便の中にウイルスが排泄されること、そして症状が出ないままウイルスを排泄している人もいることです。だからこそ、流行期は「だれが感染しているか」に関係なく、日頃の手洗いを大切にするのが現実的な対策になります。なお、有効な予防薬やワクチンはありません。
ちなみに、大人がかかると手足の発疹の痛みが強く出たり、つらく感じたりすることがあるといわれます。大人で気になる症状があるときは、小児科ではなく内科や皮膚科に相談しましょう。
手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱の違い

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夏に流行する子どもの感染症には、手足口病のほかにヘルパンギーナとプール熱(咽頭結膜熱)があります。「3大夏風邪」とも呼ばれ、どれも発熱とのどの痛みが出るため、見分けにくいんですよね。ざっくりとした違いを整理しておきましょう。
夏風邪3種の比較
| 手足口病 | ヘルパンギーナ | プール熱(咽頭結膜熱) | |
|---|---|---|---|
| 発疹・水疱の場所 | 手のひら・足の裏・足の甲・口の中 | のどの奥(口の中)が中心 | 発疹は基本なし |
| 発熱 | 出ないことも/高熱になりにくい傾向 | 急な高熱が出やすい | 高熱が数日続きやすい |
| 目の症状 | 基本なし | 基本なし | 目の充血(結膜炎)が特徴 |
| 主な原因ウイルス | エンテロウイルス属 | エンテロウイルス属 | アデノウイルス |
いちばんの見分けのヒントは、手足にも発疹が出ていれば手足口病、目が赤く充血していればプール熱、という点です。
ただし、これはあくまで一般的な傾向で、症状の出方には個人差があります。どの夏風邪も基本の対応(水分・休養・つらい症状をやわらげる)は似ていますが、正確な診断は医師にしかできません。気になるときは自己判断せず受診しましょう。
こんなときはすぐ受診|重症化のサインを見逃さない

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手足口病は多くが軽症で自然に治っていきますが、ごくまれに髄膜炎や脳炎などを合併することがあります。とくにエンテロウイルス71型による手足口病は、ほかのウイルスによるものより、こうした合併症を起こす割合が高いとされています。
「ただの夏風邪」と油断せず、次のようなサインがあれば受診を検討してください。
受診の目安
| 状態 | アクション | 目安となるサイン |
|---|---|---|
| すぐ受診・救急 | 迷わず受診/状況により救急 | けいれん/意識がぼんやり・呼びかけに反応が鈍い/ぐったりしている/呼吸が速く苦しそう/水分がとれずおしっこが出ない |
| 早めに受診 | その日〜翌日 | 高熱が2日以上続く/何度も吐く・強い頭痛/水分をいやがって飲めない/おしっこの回数が減る・色が濃い |
| おうちで様子見 | 自宅ケア継続 | 機嫌はそれほど悪くない/水分はとれている/少しずつ回復傾向 |
とくに発症して2〜3日目以降に、発熱がひどくなって吐き気や頭痛をともなうときは、脳や髄膜にウイルスが及んでいる可能性も指摘されています。いつもと様子が違う、と感じたら、早めに医療機関を受診してください。
夜間や休日で「受診すべきか迷う」ときは、小児救急電話相談 #8000(お住まいの都道府県につながり、小児科医・看護師に相談できる)を活用するのも一つの方法です。
なお、口の痛みや高熱がつらいときの薬の使い方は、自己判断せず医師・薬剤師に相談しましょう。市販薬や軟膏で必ず治る・早く治る、と断定できるものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 手足口病は何日くらいで治りますか?
発疹は通常おおむね3〜7日で消えていくとされています。ただし口の痛みのつらさや食欲が戻る早さには個人差があります。なかなか熱が下がらない・ぐったりしているなど、いつもと違う様子があれば受診してください。
Q2. 保育園はいつから登園できますか?
こども家庭庁の保育所ガイドラインでは、登園のめやすは「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」とされています。手足に発疹が残っていても、熱が下がって普段どおり食べられれば登園できるとされることが多いです。ただし書類の要否や扱いは園・自治体によって異なるため、必ず園に確認してください。
Q3. 手足口病は大人にもうつりますか?
うつることがあります。 感染経路は飛沫・接触・糞口感染です。とくに排便後・おむつ交換後の手洗い、タオルを分ける、食器を使い回さない、といった対策が基本です。大人で気になる症状があるときは内科・皮膚科に相談しましょう。
Q4. 口を痛がってごはんを食べません。どうすればいい?
プリン・ゼリー・ヨーグルト・冷ましたおかゆ・豆腐など、のど越しがよく刺激の少ないものが食べやすいです。酸味・塩気・香辛料の強いものや熱いもの・硬いものは避けましょう。基本は「食べられる分だけ」で大丈夫なことが多いですが、水分がとれずおしっこが減る・出ないときは脱水のサインなので受診を。
Q5. 一度かかれば、もうかかりませんか?
手足口病はコクサッキーウイルスA6・A16型やエンテロウイルス71型など複数のウイルスが原因になるため、別の型で再びかかることがあります。「去年かかったから安心」とは言い切れないので、流行期は手洗いを続けましょう。
Q6. 治ったあとに爪がはがれてきました。大丈夫ですか?
手足口病(とくにコクサッキーA6型などの後)では、治って数週間〜1〜2ヶ月ほど経ってから爪が浮いて剥がれる「爪甲脱落症」が起こることがあります。多くは自然に新しい爪が生えてきて変形も残らないとされます。無理に剥がさず、引っかかる部分だけ切ってあげましょう。心配なときは小児科・皮膚科で相談を。
Q7. 発疹がまだあるのに登園してもいいのですか?
登園のめやすは「発熱や口の中の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」です。手足の発疹が残っていても、全身状態が良ければ登園できるとされることが多いです。とはいえ最終判断は園・自治体のルールとかかりつけ医の指示によりますので、確認してから登園してください。
まとめ|あわてず、水分と観察を大切に
子どもの手足口病は、夏に流行しやすい身近な感染症です。最後に大切なポイントをおさらいしておきましょう。
- 症状 — 手足と口に水疱、潜伏期は3〜6日、発疹はおおむね3〜7日で消える
- 対処法 — 特効薬はなく対症療法が中心。水分・休養・食べやすい食事でつらい時期を乗り切る
- 食事 — プリンやゼリーなど刺激の少ないものを少しずつ。酸味・塩気・熱い・硬いものは避ける
- 登園 — めやすは「発熱や口内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれること」。最終判断は園・自治体・主治医に確認
- 大人にもうつる — 手洗い・タオル別・治った後も2〜4週間は便のウイルスに注意
- 受診 — 高熱が続く・水分がとれない・ぐったり・けいれん・反応が鈍いなどは速やかに医療機関へ
いちばん大切なのは、強い薬を探すことよりも、水分をとらせながらお子さんの様子をよく観察すること。「いつもと違う」と感じたら、ためらわず小児科に相談してくださいね。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください。
参考文献
- 手足口病 — 国立成育医療研究センター(症状・経過・対症療法・重症化サインと受診目安)
- 手足口病 — 厚生労働省(原因ウイルス・感染経路・回復後の手洗いと予防)
- 手足口病(詳細版) — 国立健康危機管理研究機構(旧 国立感染症研究所)感染症情報提供サイト(好発年齢・流行時期・エンテロウイルス71型の合併症)
- 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版/2023年一部改訂) — こども家庭庁(登園再開のめやす)
- 子どもが口を痛がるときの食事 — 小児科オンライン(KIDS REPUBLIC・小児科医監修/食べやすい食事・避けたい食品)
- プール熱・ヘルパンギーナ・手足口病の違いまとめ — キッズドクターマガジン(医師監修/夏風邪3種の比較)
- 手足口病 — 東京都感染症情報センター(流行・予防の補強)
- 手足口病にかかったあと、子どもの爪がはがれてきた — みんなの家庭の医学 WEB版(医師監修/爪甲脱落症)