この記事の主な参照ソース
- 「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」4学会合同の提言(日本小児歯科学会) — 2023年の改定内容
- 同 補足版(一般の皆様向け) — 年齢別の使用量と注意点
- 4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(日本口腔衛生学会) — 提言の全文
- 濃度の高いフッ化物配合薬用歯みがき剤の使用について(日本小児歯科学会) — 高濃度製品の扱い
歯みがき粉のパッケージに書かれた「950ppm」や「1450ppm」の数字。あれを気にしたことはありますか。実はここ数年で、子どもに勧められる濃度が変わっています。
2023年1月1日、日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会が合同で「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」を発表しました。以前より高い濃度が推奨されるようになった、という改定です。
仕上げ磨きのやり方とあわせて、整理しておきます。
2023年に変わったこと|濃度の推奨が上がりました

4学会合同の提言では、歯が生えてから2歳、および3〜5歳に用いられる歯磨剤の推奨フッ化物濃度が500ppmから1000ppmに、6歳以上は1500ppmへと変更されました。
背景として示されているのは、次のような考え方です。
- 歯磨剤のフッ化物濃度は、高いほどむし歯予防効果が高いと考えられる
- 一方で、飲み込みによるリスクがある
- 歯の形成期にある乳幼児・小児では、歯のフッ素症のリスクとむし歯予防のメリットのバランスを考える必要がある
そのうえで、年齢別の推奨が設定されています。
「濃度が上がった=危なくなった」ではありません。濃度と使用量をセットで管理するという設計に変わった、と理解するのが正確です。
年齢別の目安|濃度と量はセットで

| 年齢 | 推奨されるフッ化物濃度 | 使用量の目安 |
|---|---|---|
| 歯が生えてから2歳 | 1000ppm | 米粒程度(1〜2mm) |
| 3〜5歳 | 1000ppm | グリンピース程度(5mm) |
| 6歳以上 | 1500ppm | 体格に合わせて調整 |
日本小児歯科学会の補足版では、1歳児は米粒程度(1〜2mm)、3歳児はグリンピース程度(5mm)という具体的な量が示されています。あわせて、容量を守り、体格の成長に合わせて使用量を調整することが挙げられています。
そして重要な注意が1つ。1500ppmの歯磨剤は、6歳未満の小児に使用することは控えるとされています。市販の製品には「6歳未満への使用は控える」と書かれているものがあります。パッケージの表示を必ず確認してください。
歯磨剤を吐き出すこと、うがいを調整することで、フッ素の摂取量を抑えられるとも説明されています。
うがいについては、大量の水で何度もゆすがないのがポイントです。せっかく歯に届いたフッ化物を洗い流してしまうためです。少量の水で軽く、が基本になります。年齢が低くてうがいができない子は、ガーゼで軽く拭う、または吐き出させるだけで構いません。
仕上げ磨きのやり方|姿勢と順番

姿勢が最初の関門です。
- 大人が座り、ひざの上に子どもの頭をのせて仰向けにします(寝かせ磨き)
- 大人の視線から口の中がまっすぐ見える位置にします
- 唇を人差し指でめくり、歯と歯ぐきの境目を見えるようにします
- 上唇の裏の筋(上唇小帯)に歯ブラシが当たると痛がるので、指でガードします
磨く順番を決めておくと、磨き残しが減ります。
- 上の奥歯のかむ面 — 溝にむし歯ができやすい場所です
- 上の歯と歯ぐきの境目 — 汚れがたまりやすい
- 上の前歯の表と裏 — 特に前歯の裏側は見落としがち
- 下の歯も同じ順で
力は歯ブラシの毛先が広がらない程度。1本ずつ小刻みに動かします。
時間は、慣れないうちは1〜2分で十分です。長くやるより、毎日続くほうが効果があります。
特に注意したい場所を挙げます。
- 上の前歯の歯と歯ぐきの境目(哺乳期のむし歯が出やすい)
- 奥歯のかむ面の溝
- 歯と歯の間(隙間が狭い子はデンタルフロスの併用を歯科で相談)
- 生えかけの6歳臼歯(背が低く、歯ブラシが届きにくい)
嫌がる子への対応

嫌がるのは普通です。押さえつけて泣かせて終わる日が続くと、歯みがき自体が嫌いになります。
工夫を並べておきます。
- 時間を区切る — 「10数えたら終わり」と宣言し、必ず守ります。予測できると耐えられます
- 順番を固定する — 毎回同じ順で磨くと、「次はここ」が分かって落ち着きます
- 1か所だけ確実に — 全部を完璧に磨こうとしない日があっていい。上の前歯だけは死守、で構いません
- 鏡を見せる — 自分の口の中が見えると、興味に変わることがあります
- 人形やぬいぐるみで練習 — 順番を演じてから本番へ
- 終わったことを言葉にする — 「今日もできたね」で締めます
- 機嫌のいい時間帯に移す — 夜寝る直前が難しいなら、お風呂上がりに前倒しする
どうしても難しい日は、フッ化物配合歯磨剤を塗るだけでも意味があります。ゼロにしないことのほうが、1回の完璧さより大事です。
何歳まで続ける?歯科受診の目安

仕上げ磨きの終わりは、年齢よりも歯の生え変わりの状況で決まります。
| 時期 | 磨き方 | ポイント |
|---|---|---|
| 乳幼児期 | ほぼ全部を大人が磨く | 寝かせ磨き。上の前歯を重点的に |
| 小学校低〜中学年 | 本人が磨いたあとに大人が仕上げる | 6歳臼歯が生える時期。背が低く磨き残しやすい |
| 小学校高学年 | 週に数回チェックする | 前歯の生え変わり、歯並びの重なる部分を確認 |
生え変わりの時期は、歯の高さがバラバラで、歯ブラシが届かない場所が生まれます。「自分で磨けるようになった」と見えても、実際は磨き残しが増える時期です。ここで手を離すのは早い、と考えてください。
歯科を受診する目安も挙げておきます。
- 歯の表面に白く濁った部分、茶色や黒い点がある
- 歯ぐきが腫れている、磨くと血が出る
- 歯が欠けた、ぶつけた
- 歯並びやかみ合わせが気になる
- 指しゃぶりや口呼吸が続いている
- 定期健診をしばらく受けていない
乳幼児健診でも歯科健診が行われ、自治体によってはフッ化物塗布が実施されます。かかりつけの歯科を持ち、定期的に見てもらうのが、家庭での磨きを支える土台になります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください
よくある誤解とNG例

誤解1:歯みがき後は、しっかり何度もうがいをする 大量の水で何度もゆすぐと、フッ化物が洗い流されます。少量の水で軽く、が基本です。
誤解2:子どもには低濃度のほうが安全 4学会の提言では、歯が生えてから5歳までは1000ppmが推奨されています。濃度だけでなく、使用量を年齢に合わせることでバランスを取る考え方です。
誤解3:大人と同じ歯みがき粉を使えばいい 1500ppmの製品は、6歳未満の小児への使用を控えるとされています。パッケージの表示を確認してください。
誤解4:自分で磨けるようになったら仕上げ磨きは不要 生え変わりの時期は歯の高さが不揃いで、磨き残しが増えます。小学校中学年ごろまでは仕上げ、高学年でもチェックを続けるのが安全です。
NG例:泣いている子を押さえつけて長時間磨く 歯みがきそのものへの拒否につながります。時間を区切り、1か所だけでも確実に磨いて終わるほうが、翌日につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもの歯みがき粉は、どのくらいのフッ素濃度がいいですか?
4学会合同の提言では、歯が生えてから2歳と3〜5歳は1000ppm、6歳以上は1500ppmが推奨されています。2023年1月1日の発表で、以前の500ppmから引き上げられました。
Q2. 使用量はどのくらいですか?
日本小児歯科学会の補足版では、1歳児は米粒程度(1〜2mm)、3歳児はグリンピース程度(5mm)が示されています。体格の成長に合わせて調整してください。
Q3. 1500ppmの製品を5歳の子に使ってもいいですか?
1500ppmの歯磨剤は6歳未満の小児に使用することは控えるとされています。パッケージの表示を確認し、年齢に合った製品を選んでください。
Q4. 歯みがきのあと、うがいは何回すればいいですか?
大量の水で何度もゆすぐと、フッ化物が洗い流されてしまいます。少量の水で軽くが基本です。うがいができない年齢では、吐き出させるだけでも構いません。
Q5. 仕上げ磨きは何歳まで必要ですか?
年齢ではなく、生え変わりの状況で判断します。小学校中学年ごろまでは仕上げ磨きを、高学年でも週に数回のチェックを続けるのが安全です。6歳臼歯が生える時期は特に磨き残しが出やすくなります。
Q6. 嫌がって暴れます。どうすればいいですか?
「10数えたら終わり」と時間を区切り、必ず守ってください。磨く順番を固定する、1か所だけ確実に磨く、機嫌のよい時間帯に移すといった工夫が有効です。どうしても難しい日は、歯磨剤を塗るだけでもゼロよりましです。
Q7. 歯科にはどのくらいの頻度で行けばいいですか?
かかりつけの歯科を持ち、定期的に診てもらうのが基本です。頻度は歯の状態やむし歯のリスクによって異なるため、歯科医と相談してください。白い濁りや黒い点、歯ぐきの腫れがあるときは、次の定期健診を待たずに受診します。
まとめ
- 2023年の4学会合同提言で、推奨濃度は歯が生えてから5歳まで1000ppm、6歳以上1500ppmに
- 使用量は1歳で米粒程度(1〜2mm)、3歳でグリンピース程度(5mm)
- 1500ppmは6歳未満には使用を控える。パッケージ表示を確認する
- うがいは少量の水で軽く。大量にゆすぐとフッ化物が流れる
- 仕上げ磨きは寝かせ磨きで、順番を固定して短時間。上の前歯と奥歯の溝が要点
- 生え変わりの時期は磨き残しが増える。中学年ごろまでは仕上げ、高学年もチェック
今日できるのは、いま家にある歯みがき粉の濃度表示を確認することです。年齢に合っていないケースは、珍しくありません。
参考文献
- 日本小児歯科学会「「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」4学会合同の提言」
- 日本小児歯科学会「「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」補足版(一般の皆様向け)」
- 日本口腔衛生学会ほか「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」(2023年1月1日)
- 日本小児歯科学会「濃度の高いフッ化物配合薬用歯みがき剤の使用について」
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」
- 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」