この記事の主な参照ソース
- 保育所における感染症対策ガイドライン 別添「発熱時の対応」(厚生労働省) — 登園・受診の判断基準
- こどもの救急(ONLINE-QQ)発熱(38℃以上)/日本小児科学会 — 救急受診が必要なサイン
- 小児の発熱時の対応について(日本小児科学会) — 熱の高さと重症度の関係
- 子どもの症状は♯8000(厚生労働省) — 夜間・休日の相談先
抱っこしていて「なんだか熱い気がする」。あわてて体温計を出したら37.4℃。……これって熱、なんでしょうか。
こんな経験ありませんか。わたしも下の子のときに、日中37.3℃で保育園に電話して「その子の平熱によりますね」と言われ、答えに困ったことがあります。
赤ちゃんの体温は、大人より高めで、しかも1日のなかで動きます。「何度か」だけを見ても判断できないのが厄介なところ。逆に言えば、その子の平熱と、機嫌・水分・尿の3点をセットで見れば、慌てる場面はかなり減ります。
公的な資料が示している線引きを、家で使える形に落としておきます。
赤ちゃんの平熱は「その子の数字」でしか語れない

乳幼児の体温が動きやすい理由は、体温調節のしくみがまだ育ちきっていないことにあります。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」別添資料は、0〜1歳の特徴として「体温調節機能が未熟なために、外気温、室内の高い気温や湿度、厚着、水分不足等で影響を受けやすく、体温が簡単に上昇する」と書いています(いわゆる夏季熱)。
つまり赤ちゃんの体温は、病気以外の理由でも動きます。
| 体温が上がって見える場面 | よくある背景 | 家での確認 |
|---|---|---|
| 泣いた直後・遊んだ直後 | 活動による一時的な上昇 | 30分ほど静かに過ごして再検温 |
| 昼寝から起きた直後 | 布団・厚着での熱のこもり | 薄着にして涼しくしてから再検温 |
| 夕方〜就寝前 | 1日のリズムで高くなる時間帯 | 同じ時刻の平熱と比べる |
| 抱っこ紐から降りた直後 | 密着による熱のこもり | 少し離して落ち着いてから測る |
同じガイドライン別添には、「発熱については、あくまでも目安であり、個々の平熱に応じて、個別に判断する」という一文が置かれています。ここがポイントなんですが、公的な資料の側も「一律の数字では決めない」と明言しているわけです。
だから最初にやることは、体温計の数字を覚えることではなく、その子の平熱を知ることになります。
平熱を知る「1週間の記録」のやり方

平熱は「1回測った数字」ではなく、時間帯ごとの幅で持っておくと使えます。
やることは3つだけです。
1. 元気なときに測る 熱が出てからでは平熱は分かりません。ふだん機嫌よく過ごしている日に測ります。
2. 1日4回・同じ時刻に測る 起床時/午前/午後(15時前後)/就寝前。この4点を1週間続けます。「朝は36.8℃、夕方は37.3℃まで上がる子」といった幅が見えてきます。
3. 体温と一緒に機嫌をメモする 「37.2℃・機嫌よし・よく飲んだ」まで書いておくと、次に熱が出たときの比較材料になります。
母子健康手帳の余白でも、スマホのメモでも構いません。大事なのは同じ部位・同じ体温計・同じ時刻で比べること。わきの下と耳では出る数字が違うので、混ぜると平熱が分からなくなります。
保育園の入園前に平熱を測っておくと、登園判断の電話がぐっと楽になります。「この子は夕方37.3℃までは通常です」と言えるかどうかで、園の側も判断しやすくなるんですよね。
部位ごとの測り方と、当て方のコツ

家庭で使う体温計は、測る場所によって性格が変わります。
| 測る部位 | かかる時間 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| わきの下(腋窩) | 実測式で約10分/予測式で数十秒 | 数字が安定しやすい。平熱の基準に向く | 平熱の記録、受診前の記録 |
| 耳(耳式) | 1〜2秒 | 速いが、当てる角度で差が出やすい | 寝ている子、すぐ知りたいとき |
| 額・非接触 | 1秒程度 | 汗や外気の影響を受けやすい | ざっと確認したいとき |
わきの下で測るときの当て方は、意外と差が出ます。
- 汗を拭いてから測る(汗が残ると低く出ます)
- 体温計の先をわきのくぼみの中央に、下から斜め上に向けて当てる
- 腕を体にぴったり密着させ、大人の手で腕を軽く押さえる
- 泣いて暴れているときは、いったん落ち着かせてから
耳式は左右で差が出ることがあるので、いつも同じ側で測ると比べやすくなります。
実はこれ、意外と見落としがちで、体温計を買い替えたタイミングで平熱がズレて見えることがあります。新しい体温計にしたら、元気なときに測り直して平熱を更新しておくと安心です。
保育園の「37.5℃」は、どういう線なのか

「37.5℃で呼び出し」と聞いたことがある方も多いと思います。あの数字の出どころは、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」別添の「発熱時の対応」です。
そこには4つの区分で条件が並んでいます。要点だけ拾うと、こうなります。
保育が可能とされる状態
- 熱が37.5℃以下で、元気があり機嫌がよく、顔色がよい
- 食事や水分が摂れている
- 発熱を伴う発しんが出ていない
- 排尿の回数が減っていない
- 24時間以内に解熱剤を使っていない/38℃以上の熱が出ていない
登園を控えるのが望ましい状態
- 朝から37.5℃を超えた熱とともに、元気がなく機嫌が悪い/食欲がなく朝食・水分が摂れていない
- 24時間以内に解熱剤を使用している
- 24時間以内に38℃以上の熱が出ていた
- 1歳以下の乳児では、上記に加えて「平熱より1℃以上高いとき」「38℃以上あるとき」
注目したいのは、37.5℃という数字が単独では登園可否を決めていないところ。機嫌・食欲・水分・尿という「ふだんとの差」がセットで並んでいます。1歳以下では「平熱より1℃以上」という相対的な基準が入るのも、この記事の最初の話とつながります。
数字だけを追いかけると振り回されますが、見るポイントが4つに絞られていると分かると、少し気が楽になりますね。
熱の高さより先に見るべき4つのサイン

日本小児科学会の資料は、発熱について「熱が高いほど病気が重いわけではない」という考え方を示しています。40℃でも機嫌よく遊ぶ子がいる一方、38℃でぐったりしている子もいます。
「こどもの救急」(日本小児科学会)は、38℃以上の発熱で翌日の受診でよい状態を、次の4つすべてに当てはまる場合として挙げています。
- 元気がある
- 水分は取れている
- あやすと笑う
- おしっこが出ている、おむつがいつもの通り濡れている
逆に言えば、この4つが崩れているときが動くタイミングです。
我が家では体温計を出したあとに、「笑うか・飲むか・出るか」を口に出して確認する順番に変えました。数字を見て焦る前に、この3つを見るほうが判断が早いんですよね。
夜間や休日で迷ったときは、小児科医師・看護師に相談できる♯8000(小児救急電話相談)があります。厚生労働省が案内している窓口で、症状に応じた対処や受診先のアドバイスを受けられます。
やりがちな測り方・判断の間違い5つ

1. 泣いた直後・遊んだ直後に測る 活動で上がった熱をそのまま「発熱」と受け取ってしまいます。ガイドライン別添も、微熱のときは静かに過ごして30分くらい様子を見てから再検温する、という手順を挙げています。
2. 汗を拭かずにわきで測る 汗が残っていると低めに出ます。「熱がないのに元気がない」ときは、測り直しの価値があります。
3. わきの下と耳の数字を並べて比べる 部位が違えば数字も違います。平熱の記録は必ず同じ部位で。
4. 厚着・布団の中のまま測る 熱がこもった状態の数字です。薄着にして涼しくしてから測ると変わります。
5. 数字だけで受診を決める(あるいは決めない) 38℃でも機嫌がよければ翌日受診でよい場合があり、37℃台でも顔色が悪く呼吸が速ければ急ぎます。数字は判断材料の1つです。
こんなときは小児科へ

厚生労働省のガイドライン別添は、38℃以上の発熱の有無に関わらず、至急受診が必要と考えられる状態として次を挙げています。
- 顔色が悪く苦しそうなとき
- 小鼻がピクピクして呼吸が速いとき
- 意識がはっきりしないとき
- 頻繁な嘔吐や下痢があるとき
- 不機嫌でぐったりしているとき
- けいれんが5分以上治まらないとき
- 3か月未満児で38℃以上の発熱があるとき
「こどもの救急」も、元気がなくぐったりしている/呼吸があらく苦しそう/顔色・皮膚色が悪い/ずっとうとうとしている/生後3か月未満を、すぐの受診が必要なサインとして示しています。
日本小児科学会の資料でも、生後3か月未満の発熱、脱水の疑い、ぐったりしている、初めてけいれんを起こした、体温41℃以上は早めの受診が望ましいとされています。
判断に迷う段階で♯8000に電話してよい、というのが公的な案内の趣旨です。「まだ様子見でいいか」を相談するために使える窓口だと思っておくと、夜がだいぶ楽になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 赤ちゃんの平熱は何度くらいが普通ですか?
一律の数字はありません。乳幼児は大人より高めに出ることが多いですが、幅は子どもによって違います。厚生労働省のガイドライン別添も「個々の平熱に応じて、個別に判断する」としています。元気なときに1週間測って、その子の幅をつくるのが確実です。
Q2. 37.5℃は熱ですか?
保育園の登園判断では、37.5℃を超えた熱に加えて「元気がない」「食欲がなく水分が摂れていない」が重なる場合に登園を控える、という組み立てになっています。1歳以下では「平熱より1℃以上高い」も基準に入ります。数字単独では決まりません。
Q3. 耳で測ると毎回数字が違います。壊れているのでしょうか?
耳式は当てる角度や外耳の状態で差が出やすい方式です。左右で違うこともあります。いつも同じ側で、同じ入れ方で測ると比べやすくなります。判断に迷う場面ではわきの下で測り直してください。
Q4. 熱があるとき、部屋は暖かくしたほうがいいですか?
ガイドライン別添は、熱が上がって暑がるときは薄着にして涼しくし、手足が冷たいときや寒気があるときは保温する、という切り替えを示しています。室温の目安は夏26〜28℃、冬20〜23℃、外気温との差は2〜5℃です。
Q5. 解熱剤を使ったら、その日は登園できませんか?
ガイドライン別添では「24時間以内に解熱剤を使用している」は登園を控えるのが望ましい条件に挙げられています。園ごとの運用もあるので、使った時刻を伝えて相談してください。
Q6. 40℃出ているのに機嫌がいいです。受診しなくていいのでしょうか?
日本小児科学会は「熱が高いほど病気が重いわけではない」という考え方を示しています。水分が摂れて普段通り眠れていれば、翌日以降にかかりつけ医を受診してよい場合があります。ただし呼吸の様子や顔色、尿の量が崩れていれば急ぎます。
まとめ
- 赤ちゃんの体温は病気以外の理由でも動く。平熱は「その子の数字」として持つ
- 元気なときに1日4回・1週間測って、時間帯ごとの幅を知る
- 平熱の記録は同じ部位・同じ体温計・同じ時刻で
- 保育園の37.5℃は単独の線ではなく、機嫌・食欲・水分・尿とセットの基準。1歳以下は「平熱より1℃以上」も入る
- 熱の高さより、笑うか・飲むか・尿が出ているか・呼吸と顔色を先に見る
- 顔色不良、呼吸が速い、意識がはっきりしない、5分以上のけいれん、3か月未満で38℃以上は急ぎの受診
- 迷ったら♯8000
体温計の数字は、それ単体では何も教えてくれません。その子の平熱という基準線があってはじめて、「今日はいつもと違う」が読み取れるようになります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください