この記事の主な参照ソース
- 産まれてから2歳頃まで(日本小児歯科学会) — 乳歯の生える順番と個人差
- 3歳ごろから就学前まで(日本小児歯科学会) — 乳歯列の完成
- 小学生低学年(日本小児歯科学会) — 永久歯への生え変わり
- 歯とお口の発生と育ち方|テーマパーク8020(日本歯科医師会) — 歯の発育の流れ
児童館で「もう歯、生えた?」と聞かれて、「まだなんです」と答えるときの、あの微妙な空気。みなさんは経験ありませんか。
同じ月齢の子がもう4本生えているのを見ると、うちの子は大丈夫なのかと気になります。しかも生えてきたら今度は「順番、これで合ってる?」と別の心配が始まる。
歯の生え方は、公的な学会の情報を見ると個人差が大きいことが前提になっている分野です。どこまでが幅の中で、どこから相談したほうがいいのか。日本小児歯科学会が示している線を軸に整理します。
乳歯が生える順番と時期の一覧

日本小児歯科学会の情報では、乳歯はまず下の真ん中の2本から、生後6〜9か月ごろに生えはじめます。
その後の流れは、おおまかにこうなります。
| 順番 | 歯の名前 | 生える時期の目安 | 本数(累計) |
|---|---|---|---|
| 1 | 下の乳中切歯(下の前歯2本) | 生後6〜9か月ごろ | 2本 |
| 2 | 上の乳中切歯(上の前歯2本) | 続いて生えてくる | 4本 |
| 3 | 上下の乳側切歯(前歯の隣) | 前歯のあとに順次 | 8本 |
| 4 | 第一乳臼歯(奥歯) | 15か月ごろ | 12本 |
| 5 | 乳犬歯(側切歯と奥歯の間) | 2歳ごろ | 16本 |
| 6 | 第二乳臼歯(さらに奥) | 2歳半〜3歳ごろ | 20本 |
順番の特徴として、犬歯が奥歯より後に生えるという点があります。前から順番に並ぶわけではなく、先に奥歯(第一乳臼歯)が出て、あとから前歯と奥歯の間のすき間に犬歯が入ります。
「間が空いているけど大丈夫?」と気になる時期があるのは、この順番のせいです。すき間は、あとから犬歯が入る場所というわけですね。
最終的に乳歯は20本で完成します。永久歯は28本(親知らずを含めると最大32本)なので、乳歯のほうが少ないのが正常です。
「遅い」と言えるのはいつからか

ここがこの記事のいちばん大事なところです。
日本小児歯科学会は、生える時期について「個人差もありますのであまり気にしないでよいと思います」とし、「遅い場合は1歳を過ぎてからようやく生えてくることもあり、生える時期には個人差があります」と書いています。
そして1歳時点でまだ生えていない場合の判断として、次の2点を示しています。
- 「1歳になってまだ生えていなくても、歯ぐきが他の部分と比べ膨らんでいれば、歯がある証拠なので心配はありません」
- 「1歳3か月ごろになってもまだ歯が生えてこないようなら小児歯科専門医またはかかりつけの歯科医院で相談しましょう」
つまり、家でできる確認は「歯ぐきの膨らみを見る」ことで、相談を考える目安は1歳3か月です。
実はこれ、意外と見落としがちで、1歳になった瞬間に焦る方が多いのですが、学会の側は1歳3か月という線を示しています。それまでは歯ぐきの様子を見ながら待てる範囲、という整理になります。
1歳6か月児健康診査では歯の状態も確認されます。健診のタイミングと相談の目安が近いので、健診の場で聞いてしまうのが手っ取り早いです。
順番が違う・左右で差があるとき

生える順番は、目安どおりに進まないこともあります。
| よくあるパターン | どう考えるか |
|---|---|
| 上の前歯が下より先に生えた | 順番の入れ替わりは起こりえます。生えてくること自体が確認できていれば、経過を見ます |
| 左右で1本だけ先に出た | 左右差が数か月あることは珍しくありません |
| 奥歯が犬歯より先に生えた | これは通常の順番です(第一乳臼歯 → 乳犬歯) |
| 1本だけずっと出てこない | 歯ぐきの膨らみを確認し、健診や歯科で相談します |
| 生えてきた歯の形や色が気になる | 日本小児歯科学会は母子健康手帳の記載マニュアルで、歯の形態・色調の異常の考え方を示しています。写真を撮って歯科で見せると伝わりやすいです |
順番よりも気にしたいのは、「生えてきているかどうか」と「歯の状態」です。順番の入れ替わりそのものが問題になるケースは限られます。
もうひとつ、生え始めの時期に決めておくと後が楽になるのが歯科のかかり方です。1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査では歯の状態が確認されますが、その間隔は1年半あります。歯が生えそろっていく時期は、むし歯のできやすさも変わっていくので、健診の合間にかかりつけの歯科を1軒決めておくと、気になったときにすぐ相談できます。最初の受診は「治療」ではなく「見てもらう」目的で行くと、子どもが歯科の椅子に慣れる機会にもなります。痛くない状態で通った経験があるかどうかで、後の受診のしやすさが変わってきます。
生え変わりは6歳ごろから始まる

乳歯がそろって一安心、と思っていると、次は生え変わりが来ます。
日本小児歯科学会の情報では、6歳ごろに最初の永久歯が生えはじめます。以前は第一大臼歯(6歳臼歯)が最初に出るのが典型でしたが、近年は下の乳中切歯が先に生え変わることが多いという記述になっています。
流れはこうです。
| 年齢の目安 | 起きること |
|---|---|
| 6歳ごろ | 最初の永久歯が生えはじめる(下の前歯、または第一大臼歯) |
| 永久中切歯が生えてから6〜12か月 | 側切歯と上の前歯が乳歯から入れ替わる |
| その数か月後 | 上の側切歯が生え変わる |
| 9〜12歳 | 犬歯、第一・第二乳臼歯が順次入れ替わり、第二大臼歯が後ろに生えて永久歯列が完成 |
| 20歳ごろ | 第三大臼歯(親知らず)が生える人もいる |
第一大臼歯は、乳歯が抜けた場所ではなく乳歯列の後ろに新しく生えてくる歯です。抜けた歯がないので気づきにくく、むし歯になりやすい歯として知られています。6歳前後は、奥のほうまで見る習慣をつけたい時期になります。
よくある誤解とNGパターン

1. 「乳歯は抜けるから、むし歯でも大丈夫」 乳歯のむし歯は、痛みや食べにくさに直結しますし、その後に生えてくる永久歯の環境にも関わります。抜ける前提で放置する理由にはなりません。
2. 「生える順番が違うと歯並びが悪くなる」 順番の入れ替わりや左右差は起こりえます。歯並びの相談は、乳歯列がそろってからのほうが判断材料が増えます。気になる場合は小児歯科で確認してください。
3. 「1歳で生えていないのは異常」 日本小児歯科学会は1歳を過ぎてようやく生えることもあるとしています。相談の目安は1歳3か月ごろです。
4. 「歯が生えるまで口のケアはいらない」 歯が生える前から口の中を触られることに慣れておくと、歯みがきの導入が楽になります。生えたら1本からケアを始めます。
5. 「1本生えたら市販の歯みがき粉をたっぷり使う」 月齢に合った量と種類があります。健診や歯科で確認してから使うほうが確実です。
こんなときは歯科・小児科へ

次のような場合は、小児歯科専門医またはかかりつけの歯科医院に相談してください。
- 1歳3か月ごろになっても歯が1本も生えてこない(日本小児歯科学会が示す相談の目安)
- 歯ぐきに膨らみが見当たらない
- 生えてきた歯の色や形が、他の歯と明らかに違う
- 生えたばかりの歯がすぐに欠けた・削れた
- 口の中を痛がって食べたがらない
- 転倒などで歯や口の中を打った
1歳6か月児健康診査、3歳児健康診査では歯の状態も確認されます。こども家庭庁の「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」にも診察項目が整理されており、健診は相談の入口として使えます。
歯を強く打った場合は、見た目に変化がなくても後から色が変わることがあります。日付と状況をメモしておくと、後で歯科に伝えやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 乳歯は何本生えますか?
20本です。2歳半〜3歳ごろに第二乳臼歯が生えて完成します。永久歯は28本(親知らずを含めると最大32本)なので、乳歯のほうが少ないのが正常です。
Q2. 1歳になっても1本も生えていません。受診したほうがいいですか?
日本小児歯科学会は、1歳の時点で生えていなくても歯ぐきが他の部分より膨らんでいれば心配はないとしています。相談を考える目安は1歳3か月ごろです。1歳6か月児健診で確認してもらうのも一つの方法です。
Q3. 上の前歯が先に生えました。順番が違うと問題がありますか?
順番の入れ替わりは起こりえます。生えてきていること自体が確認できていれば、経過を見る形になります。気になる場合は健診や歯科で相談してください。
Q4. 前歯の間にすき間があります。歯並びが心配です。
乳歯の時期は、あとから生える犬歯のためのすき間が空いていることがあります。乳歯列に適度なすき間があるのは、永久歯が並ぶうえで不利になるものではないと説明されます。判断は歯科で確認してください。
Q5. 生え変わりはいつから始まりますか?
6歳ごろです。以前は第一大臼歯(6歳臼歯)が最初とされていましたが、近年は下の前歯が先に生え変わることが多いとされています。9〜12歳にかけて犬歯や臼歯が入れ替わります。
Q6. 6歳臼歯はどこに生えるのですか?
乳歯が抜けた場所ではなく、乳歯列のいちばん後ろに新しく生えてきます。抜けた歯がないので気づきにくく、みがき残しが出やすい歯です。6歳前後は奥のほうまで確認する習慣をつけてください。
まとめ
- 乳歯は下の前歯2本から生後6〜9か月ごろに生えはじめ、2歳半〜3歳ごろに20本そろう
- 順番の特徴は奥歯(第一乳臼歯)→ 犬歯。前から順ではない
- 生える時期は個人差が大きい。1歳で未発生でも歯ぐきの膨らみがあれば経過観察
- 相談の目安は1歳3か月。1歳6か月児健診で確認するのも手
- 順番の入れ替わりや左右差は起こりえる。気にしたいのは「生えているか」と「歯の状態」
- 生え変わりは6歳ごろから。第一大臼歯は乳歯列の後ろに生えるので見落としやすい
歯の話は「同じ月齢の子」と比べたくなる場面が多いのですが、学会側の情報が最初に置いているのは「個人差」です。基準線と相談の目安を持っておけば、比べる必要はぐっと減ります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください