この記事の主な参照ソース
- 令和5年度子供の学習費調査結果のポイント(文部科学省) — 幼稚園〜高校の公立・私立別学習費の公式統計
- 令和3年度 教育費負担の実態調査結果(日本政策金融公庫) — 高校入学から大学卒業までの費用の実態調査
- 令和8年度 高等学校等就学支援金の周知用リーフレット(文部科学省) — 2026年度からの高校授業料支援の公式情報
- 児童手当制度のご案内(こども家庭庁) — 児童手当の支給額・支給対象の公式情報
- 私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果(文部科学省) — 私立大学の最新の納付金平均
「子ども1人育てるのに、教育費は1,000万円かかるらしいよ」——こんな話を聞いて、そっと家計のことを考え込んでしまったこと、ありませんか?
赤ちゃんのうちはピンとこなくても、幼稚園、小学校と進むにつれてじわじわ気になってくるのが教育費です。実は、教育費は「総額」だけを見ると確かに大きいのですが、いつ・どこで・どれくらいかかるかには、はっきりしたパターンがあるんですよね。
この記事では、文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」と日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」という公的な調査をもとに、幼稚園から大学までの教育費の総額を公立・私立別に整理しました。あわせて、負担を軽くしてくれる公的制度と、無理のない貯め方の考え方も紹介します。
先にお伝えしたいのは、大切なのは「全額を今すぐ用意すること」ではなく、「いつ・いくらかかるか」の見通しを立てることだということ。見通しさえ立てば、教育費はむやみに怖いものではありませんよ。
子供の教育費の総額はいくら?目安は約1,100万〜2,800万円

結論からいきますね。幼稚園(3歳)から大学卒業までの教育費の総額は、進路の選び方によっておおよそ1,100万円〜2,800万円が目安です。
これは、幼稚園から高校までを文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」、大学分を日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」で見たときの単純合算で、次のような計算になります。
- すべて公立+国公立大学:約614万円+約481万円=約1,100万円
- すべて私立+私立大学(理系):約1,969万円+約822万円=約2,800万円
※調査年度も調査方法も異なる2つの調査を足し合わせた「目安」です。実際の金額は地域・学校・進路によって変わります。
とはいえ、教育費は約19年かけて少しずつ払っていくお金です。仮に総額約1,100万円を19年間でならすと、1年あたり約58万円、月あたり約4.8万円という計算になります(単純計算)。
しかもこの総額は、令和5年度・令和3年度時点の制度を前提にした「保護者が支払った額」がベース。2026年度からの高校授業料支援の拡充は未反映で、児童手当のような「もらえるお金」も別にあります。まずは「山がどこに来るか」を一緒に見ていきましょう。
幼稚園から高校まででいくら?公立・私立の学習費を比較

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」は、保護者が1年間に支出した「学習費総額」を調べた公式統計です。学校に払うお金(授業料・教材費・給食費など)だけでなく、塾や習い事などの学校外活動費まで含んだ金額なのがポイントです。
学校段階別・公立私立別の年間額は次のとおりです。
| 学校段階 | 公立(年間) | 私立(年間) | 公私の差 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園 | 約18.5万円 | 約34.7万円 | 約1.9倍 |
| 小学校 | 約36.7万円 | 約174.2万円 | 約4.8倍 |
| 中学校 | 約54.2万円 | 約156.0万円 | 約2.9倍 |
| 高校(全日制) | 約59.7万円 | 約117.9万円 | 約2.0倍 |
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
差がいちばん大きいのは小学校で、私立は公立の約4.8倍。私立小学校は6年間だけで約1,046万円と、オール公立15年分をゆうに超えます。
この年額をもとに、幼稚園3歳から高校3年まで15年間の総額を進路パターン別に合計すると、こうなります。
| 進路パターン | 15年間の学習費総額 |
|---|---|
| ケース1:すべて公立 | 約614万円 |
| ケース2:幼稚園だけ私立 | 約665万円 |
| ケース3:幼稚園と高校が私立 | 約838万円 |
| ケース4:すべて私立 | 約1,969万円 |
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(各学年の平均年額の単純合計)
オール私立だと約1,969万円。……さすがに身構えてしまう金額ですよね。ただ、同資料の参考値(令和5年度学校基本統計)によると、私立小学校に通う児童は全体の1.3%とかなりの少数派。多くの家庭にとって現実的なラインは、ケース1〜3の約614万〜838万円のゾーンです。
塾・習い事代は「受験期」に山が来る
学習費の中身を見ると、公立では小6以降、私立では小4以降に、塾などの「補助学習費」が習い事系の支出を上回ります。学校外活動費のピークは、公立なら中3の約44.6万円、私立なら小6の約89.1万円(いずれも年額)。受験学年に塾代の山が来る、という実感どおりの結果です。
なお、学校外活動費は世帯の年間収入が高いほど多く支出される傾向があり、「かけようと思えばいくらでも、絞ろうと思えば絞れる」調整しやすい費目でもあります。周りと比べて焦る必要はありません。
幼稚園の負担が軽いのは「無償化」のおかげ
表を見て「幼稚園、思ったより安いかも」と感じた方もいるはず。これは2019年10月に始まった幼児教育・保育の無償化で、3〜5歳児クラスの利用料が無償化されているためです(詳しくは公的制度の章で解説します)。
大学でいくらかかる?国公立・私立の費用差

教育費の最大の山場が大学です。日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」によると、高校入学から大学卒業までにかける教育費用は子ども1人当たり942.5万円。高校3年間の約262万円を除いた大学分の目安は、次のとおりです。
| 進学先 | 入学費用 | 在学費用(年間) | 入学+4年間の合計(単純計算) |
|---|---|---|---|
| 国公立大学 | 約67.2万円 | 約103.5万円 | 約481万円 |
| 私立大学(文系) | 約81.8万円 | 約152.0万円 | 約690万円 |
| 私立大学(理系) | 約88.8万円 | 約183.2万円 | 約822万円 |
出典:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」(入学費用は受験費用等を含む家計負担ベース)
より新しい数字も見ておくと、文部科学省の調査では、私立大学(学部)の令和7年度入学者の初年度納付金は平均約150.8万円(授業料約96.8万円+入学料約24.0万円+施設設備費約17.3万円)で、前年度より2.1%増えています。国立大学は国が示す標準額が授業料年53万5,800円・入学料28万2,000円ですが、実際の額は大学によって異なる場合があります。
一人暮らしならプラス年100万円弱を見込む
自宅を離れて進学する場合は、学費とは別に生活費の支援が必要になります。同じ日本政策金融公庫の調査では、自宅外通学者への仕送りは年間平均95.8万円(月額約7.9万円)。敷金や家財の購入など、一人暮らしを始めるための初期費用も平均38.7万円かかっています。
進学先が自宅圏内かどうかで、大学4年間の負担は数百万円単位で変わります。進路を考えるうえで意外と大きな分かれ道です。
使わないともったいない。教育費を軽くする公的制度

ここまでの金額は「支払う側」から見た数字でした。次は「支えてくれる側」、つまり公的制度です。執筆時点(2026年7月)で使える主な制度をまとめました。
| 制度 | 対象 | 内容のポイント |
|---|---|---|
| 幼児教育・保育の無償化 | 3〜5歳児クラス(0〜2歳は住民税非課税世帯) | 幼稚園・保育所・認定こども園等の利用料が無償化(幼稚園は月2.57万円まで)。給食費・行事費などは対象外 |
| 高等学校等就学支援金 | 高校生。2026年度から所得制限なし・要申請 | 授業料を支援。上限は公立(全日制等)年11万8,800円、私立(全日制)年45万7,200円 |
| 高校生等奨学給付金 | 住民税非課税世帯など(年収約490万円未満まで段階的に拡充) | 教科書費・教材費など授業料以外を支援する返還不要の給付金 |
| 児童手当 | 0歳〜高校生年代(所得制限なし) | 月1万〜1.5万円、第3子以降は月3万円を偶数月に支給 |
| 高等教育の修学支援新制度 | 大学・短大・高専・専門学校の学生(要件あり) | 授業料等減免+給付型奨学金。2025年度から子3人以上の多子世帯は所得制限なく一定額まで減免 |
出典:文部科学省・こども家庭庁の各公式ページ(2026年7月時点)
高校の授業料支援は2026年度から所得制限なしに
文部科学省の令和8年度リーフレットによると、2026年度(令和8年度)から高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、世帯年収に関わらず授業料の支援が受けられるようになりました。支給上限は年額で公立高校(全日制等)11万8,800円、私立高校(全日制)45万7,200円などです。
ただし対象は「授業料」のみ。入学金や制服代、修学旅行の積立などは対象外ですし、授業料が上限を超える私立高校では差額の負担が残ります。「高校は完全にタダ」ではない点は押さえておきましょう。
実はこれ、意外と見落としがちなんですが、就学支援金は申請しないと受けられません。入学時に学校から案内されるオンライン申請(e-Shien)などの手続きを忘れないようにしてくださいね。
児童手当は高校生年代まで・所得制限なしに拡充済み
児童手当は2024年10月分から大きく拡充されました。こども家庭庁の案内によると、対象は0歳から高校生年代(18歳到達後最初の3月31日)までに延長され、所得制限も撤廃。月額は3歳未満が1万5,000円、3歳〜高校生年代が1万円、第3子以降は年齢を問わず月3万円です(第3子のカウントは、親に経済的負担がある場合22歳年度末までの兄姉を含めます)。
教育費の貯め方 — 「大学費用」を先回りで準備するのが基本

見通しが立ったところで、貯め方の考え方です。基本の型はシンプルで、幼稚園〜高校の費用はその時々の家計から払い、金額が大きい大学費用だけを先回りで積み立てておくというものです。
日本政策金融公庫の調査(令和3年度)では、在学費用は世帯年収の平均14.9%を占め、捻出方法は「ほかの支出の節約」28.6%、「子ども本人のアルバイト」21.5%、「奨学金」19.2%、「預貯金や保険の取り崩し」18.8%が上位でした。つまり、在学が始まってからの家計はすでにいっぱいいっぱいになりやすい。だからこそ、時間のある乳幼児期からの先回りが効くわけです。
まずは児童手当。全部貯めると約230万円
ここがポイントなんですが、児童手当を0歳から高校生年代まで全額貯めると、第1子・第2子の場合で単純計算およそ230万円になります(3歳未満:月1.5万円×36カ月=54万円、3歳〜18歳年度末:月1万円×約180カ月=約180万円。誕生月により多少変動)。
一方、日本政策金融公庫の調査ベースで私立大学文系の「入学費用+1年目の在学費用」は約234万円。……ちょっと出来すぎなくらい、ぴったり重なるんです。児童手当を生活費と分けて専用口座に入れておくだけで、大学初年度分の土台ができる計算になります。
貯め方の選択肢を比較
児童手当だけで足りない分は、家庭に合った方法で上乗せしていきます。代表的な選択肢の特徴を並べてみました。
| 方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 児童手当をそのまま貯蓄 | 家計と分けて管理しやすく、第1子・第2子で総額約230万円(単純計算) | 生活費の口座に混ざると貯まりにくい |
| 自動積立定期などの預貯金 | 元本が確保され、必要なときに引き出しやすい | 大きく増えることは期待しにくい |
| 学資保険 | 進学時期に合わせて受け取れ、計画的に準備しやすい。契約者に万一のことがあった場合、以後の保険料が免除される商品もある | 途中解約すると受け取りが払込額を大きく下回る可能性がある |
| NISA(つみたて投資枠など) | 運用益が非課税。積立額の変更や現金化のタイミングが柔軟 | 元本保証はなく、必要な時期に値下がりしている可能性がある |
参考:明治安田生命「学資保険の代わりにNISAは使える?」ほか
どれか1つに絞る必要はありません。確実に必要になる分は預貯金や学資保険など元本確保性の高い方法で、余裕資金は NISA などの運用で、と分けて考える「併用」の発想が紹介されることも多いです。ただし NISA は投資なので、教育費の全部を託すのではなく、家計の余力と相談しながらが大前提。判断に迷うときは、金融機関やファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も検討してみてください。
※本記事は特定の金融商品をおすすめするものではなく、個別の投資助言でもありません。各商品・制度の詳細は公式情報でご確認ください。
教育費でやりがちなNG・よくある誤解

最後に、教育費まわりでつまずきやすいポイントを4つ挙げておきます。
NG1. 「総額1,000万円」を見て今すぐ全額必要だと焦る
総額はあくまで19年間の累計です。月割にすれば数万円規模の話で、しかも公立中心なら山が来るのは大学期。「今すぐ全部」ではなく「大学までにいくら」で考えるのが正解です。
NG2. 支援制度は自動的にもらえると思い込む
就学支援金も児童手当も、申請して初めて受け取れる制度です。出生時・転居時・高校入学時が手続きのタイミング。学校や自治体からの案内は後回しにしないのがおすすめです。
NG3. 貯め始めを「高校生になってから」に先送りする
高校期は塾代のピーク(公立中3で年約44.6万円)を越えた直後で、在学費用の負担も続いています。収入の多くが教育費に向かう時期に、大学費用まで並行して貯めるのは正直かなり大変。時間を味方にできる乳幼児期からの積み立てが、結局いちばんラクなんです。
NG4. 「うちはずっと公立だから」と進路変更を想定しない
令和5年度の学校基本統計ベースでは、全日制高校の生徒の約35.5%が私立に通っています。中学受験をしなくても、高校から私立になる可能性はごく普通にあるということ。オール公立前提ぴったりの資金計画ではなく、少し余裕を持たせた計画にしておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子ども1人の教育費は、平均で総額いくらですか?
進路によって幅がありますが、幼稚園から高校までは全て公立で約614万円、全て私立で約1,969万円(文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」)。大学分は国公立で約481万円、私立理系で約822万円(日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」の単純計算)です。合算すると約1,100万〜2,800万円が一つの目安になります。
Q2. 公立と私立では、どの段階の差が一番大きいですか?
小学校です。令和5年度調査では公立が年約36.7万円に対し私立は年約174.2万円と約4.8倍の差があります。ただし私立小学校に通う児童は全体の1.3%で、多くの家庭では中学以降や高校からの私立を想定しておけば十分です。
Q3. 大学費用はいつまでに、いくら準備すればいいですか?
一つの考え方として、受験費用・入学金・初年度学費がまとまって出ていく「大学初年度分」を高3までに準備する方法があります。令和3年度の日本政策金融公庫調査ベースの単純計算で、国公立なら約170万円、私立文系なら約234万円です。2年目以降の分は、在学中の家計や奨学金等と組み合わせる設計も可能です。
Q4. 児童手当を全部貯めると、どこまでカバーできますか?
第1子・第2子の場合、0歳から高校生年代までの総額は単純計算で約230万円(第3子以降は月3万円のためさらに大きくなります)。私立大学文系の入学費用+1年目在学費用(約234万円・令和3年度調査)とほぼ同水準で、大学初年度分の有力な土台になります。
Q5. 高校の授業料は無償になったのですか?
2026年度(令和8年度)から就学支援金の所得制限がなくなり、公立(全日制等)は年11万8,800円、私立(全日制)は年45万7,200円を上限に授業料が支援されます。ただし対象は授業料のみで、入学金・制服・教材費などは対象外。授業料が上限を超える私立では差額負担も残ります。申請が必要な点にもご注意を。
Q6. 学資保険とNISA、どちらで貯めるべきですか?
性質が違うので、一概にどちらが良いとは言えません。学資保険は計画的に貯めやすく契約者に万一のことがあった場合の保障がある一方、途中解約で元本割れの可能性があります。NISAは運用益が非課税で柔軟ですが、元本保証はありません。確実に必要な分は元本確保型、余裕資金は運用型と分けて併用する考え方もあります。迷う場合は専門家への相談を検討してください。
まとめ — 見通しが立てば、教育費は怖くない
教育費のポイントをおさらいします。
- 幼稚園から大学までの総額目安は約1,100万〜2,800万円(進路により大きく変動)
- 幼稚園〜高校はオール公立で約614万円、オール私立で約1,969万円(令和5年度・文科省調査)
- 最大の山は大学。国公立約481万円、私立理系約822万円+自宅外なら仕送り年約96万円(令和3年度・日本政策金融公庫調査)
- 幼児教育無償化・高校の就学支援金(2026年度から所得制限なし)・児童手当など、支えてくれる制度は年々手厚くなっている(ただし申請は必須)
- 貯め方の基本は「幼〜高は家計から、大学分は先回り」。児童手当を貯めるだけで約230万円の土台ができる
金額の大きさに驚くより、わが家の進路イメージで「いつ・いくら」を一度書き出してみること。それだけで、漠然とした不安はかなり軽くなります。制度の詳細や家計全体の設計に迷ったら、自治体の窓口や学校の事務室、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみてくださいね。
※本記事は執筆時点(2026年7月)の公開情報に基づく一般的な解説であり、特定の金融商品の推奨や個別の投資助言ではありません。制度の内容は変更される場合があるため、最新情報は文部科学省・こども家庭庁などの公式サイトでご確認ください。