この記事の主な参照ソース
- 音声・言語・嚥下の異常(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会) — 構音の発達と構音障害の種類
- 音声・言語(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会) — 発音の異常について
- 乳幼児健診で難聴(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会) — 聞こえの確認
- 3歳児健康診査 難聴を見逃さないために(日本耳鼻咽喉科学会) — 健診での確認事項
「これ、なあに?」「たかな!」
さかなを「たかな」と言う。「せんせい」が「てんてい」になる。かわいいと思っていたのが、4歳を過ぎたあたりから「そのままでいいのかな」に変わってきた。
みなさんは、子どもの発音をどこまで気にしていますか。ネットで調べると「気にしなくていい」と「早めに相談」の両方が出てきて、判断がつかない。わたしも同じところで迷いました。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の情報には、時期の目安と、自然に改善しやすいタイプの区別が書かれています。そこを軸にすれば、様子を見る期間にも根拠が持てます。
発音(構音)はいつまでに育つのか

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、構音は5歳までに9割が確立されると言われているとしています。
構音とは、口や舌を使って音を作る動作のことです。すべての音が同時に育つわけではなく、作りやすい音から順に身についていくという順序があります。
たとえば「パ・バ・マ」のように唇を閉じて出す音は早い段階で出せるようになりますが、「サ・ス・セ・ソ」のように舌先と歯のすき間で細く息を通す音は、より細かい動きが必要になります。だからさ行が後になるのは、順序として珍しいことではありません。
同学会は、構音の異常について「話しことばがひずんでいることでことばの明瞭度を低下させたり、社会生活上不利となる原因になります」とし、その頻度は小学校低学年ではおよそ10%にも及ぶことがあるとしています。
10%という数字を見ると、思っていたより多いと感じる方もいるでしょう。周囲に相談しにくいテーマなので少数派に見えますが、実際には一定の割合で起きていることになります。
ここがポイントなんですが、「5歳までに9割」という表現は、5歳で全員が完成するという意味ではありません。 残りの部分がいつ、どうなるかを判断するために、次の区別が使われます。
自然に改善しやすいタイプと、そうでないタイプ

学会の説明では、構音障害は原因によって分けられています。
| 機能性構音障害 | 器質性構音障害 | |
|---|---|---|
| 原因 | 言語を習得する段階で間違った発音を覚えてしまった場合 | 口蓋裂などで咽頭や口腔の構造に異常がある場合 |
| 経過 | 小学校低学年の内に自然に改善することが多い | 構造の問題があるため自然には解消しない |
| 対応 | 訓練により改善が期待できる | 手術と訓練が必要になる |
この区別が、判断のいちばん大きな分かれ目です。
学会は、「構音操作の誤りであるいわゆる機能性構音障害であれば、小学校低学年の内に自然に改善することが多いです」と書いています。つまり、多くのケースは経過を見る対象になります。
一方で、構造に原因がある場合は待っても変わりません。 この見分けは家庭ではできないので、気になる段階で一度診てもらう価値があります。
「様子を見る」という判断も、診てもらった上での様子見と、何も分からないままの様子見では中身が違います。前者は安心して待てますが、後者は毎年同じ心配を繰り返すことになります。
聞こえの確認が先にくる

発音の話をする前に、押さえておきたいのが聞こえです。
音が正しく聞き取れていないと、正しい発音を覚える手がかりが少なくなります。日本耳鼻咽喉科学会は、1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査について「難聴を見逃さないために」という資料を出しており、健診の場で聞こえの確認が行われる位置づけになっています。
家庭で気づける手がかりとしては、次のようなものがあります。
- 呼んでも振り向かないことがある
- テレビの音量を大きくしたがる
- 聞き返しが多い
- 静かな場所では聞けるが、にぎやかな場所で聞き取りにくい
- 中耳炎を繰り返している
中耳炎を繰り返している場合は、その期間の聞こえが影響することがあります。 発音が気になる時期に耳の症状もあるなら、両方まとめて耳鼻咽喉科で相談するのが効率的です。
健診で指摘がなかった場合でも、家庭で気になる点があれば伝えて構いません。健診は一度きりの確認なので、その後の変化は保護者からの情報が手がかりになります。
家庭でやらないほうがいい関わり方

ここは、意図せずやってしまいやすいところです。
1. 言い直させる 「たかな、じゃなくて、さかな。言ってみて」を繰り返すと、話すこと自体が負担になります。本人が言えない音を意識させるだけになりがちです。
2. 間違いを笑う・かわいがりすぎる どちらも、本人が「その言い方でいい」と受け取る材料になります。反応を大きくせず、自然に受け止めるほうが穏やかです。
3. 本人の前で心配を話す 「この子、まださ行が言えなくて」を本人の前で話すと、自分の話し方への不安につながります。
4. 早口で話しかける 聞き取りの手がかりを減らします。ゆっくり、はっきり、短めの文で話すほうが伝わります。
5. 家庭で発音練習をさせる 訓練は、状態を評価した上で方法を決めるものです。自己流の練習は、誤った動きを固定してしまうことがあります。
代わりにできることは、シンプルです。大人が正しい音でゆっくり言い直して聞かせる(本人に言わせない)。絵本の読み聞かせで、口の動きが見える距離に座る。会話の中身に反応する(何を言ったかを受け取る)。
うちの子のときも、言い直させるのをやめてから、話す量が明らかに増えました。話す量が増えれば、正しい音に触れる機会も増えます。
相談先と、相談のタイミング

相談先は、目的によって分かれます。
| 相談先 | 何を確認できるか |
|---|---|
| 耳鼻咽喉科 | 聞こえ、口や咽頭の構造、構音の状態 |
| 1歳6か月児健診・3歳児健診・保健センター | 発達全体の中での位置づけ、地域の相談先の案内 |
| 園・幼稚園の先生 | 集団の中での聞き取りやすさ、本人が困っている場面 |
| 言葉の教室・ことばの相談室 | 自治体や学校を通じた継続的な相談(地域により名称・窓口が異なる) |
タイミングとしては、次のような場合に相談を検討するのが現実的です。
- 年長(5〜6歳)になっても、複数の音がはっきりしない
- 家族以外に聞き取ってもらえないことが多い
- 本人が話すことを避けるようになった、話す量が減った
- 園で「聞き取りにくい」と言われた
- 聞こえに気になる点がある、中耳炎を繰り返している
小学校入学が近づいている場合は、早めに動くほうが選択肢が広がります。 就学前に相談しておけば、入学後の支援につなげやすくなります。
こんなときは受診を

次のような場合は、耳鼻咽喉科や小児科、保健センターに相談してください。
- 年長(5〜6歳)になっても複数の音がはっきりしない
- 家族以外の人に聞き取ってもらえないことが多い
- 本人が話すことを避けるようになった
- 呼んでも振り向かない、聞き返しが多い(聞こえの心配がある)
- 中耳炎を繰り返している
- 食べこぼしが多い、飲み込みにくそうにしている
- これまで言えていた音が急に言えなくなった
特に最後の項目は、経過が変わったサインとして扱われます。「できていたことができなくなった」場合は、時期を問わず相談してください。
なお、発音の心配と併せて、ことばの数や文の長さも気になる場合は、その点も一緒に伝えると相談がスムーズです。こども家庭庁の「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」にも発達の確認項目が整理されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. さ行が言えないのは何歳まで様子を見ていいですか?
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、構音は5歳までに9割が確立されるとしています。また、機能性構音障害であれば小学校低学年の内に自然に改善することが多いとされています。ただし、構造に原因がある場合は待っても変わらないため、気になる段階で一度診てもらうと判断がはっきりします。
Q2. 言い直させたほうが早く直りますか?
言い直しを繰り返すと、話すこと自体への負担になりやすいとされています。本人に言わせるのではなく、大人が正しい音でゆっくり言い直して聞かせる形のほうが穏やかです。訓練が必要かどうかは評価の上で決まります。
Q3. 構音障害はどのくらいの子に見られるのですか?
学会の情報では、構音の異常の頻度は小学校低学年でおよそ10%にも及ぶことがあるとされています。
Q4. 聞こえの検査も受けたほうがいいですか?
発音の背景に聞こえの問題があることもあります。1歳6か月児健診・3歳児健診では聞こえの確認が行われる位置づけになっており、健診後に気になることがあれば耳鼻咽喉科で相談できます。中耳炎を繰り返している場合は特に確認の価値があります。
Q5. 小学校に入る前に相談したほうがいいですか?
就学前に相談しておくと、入学後の支援につなげやすくなります。年長で複数の音がはっきりしない場合や、園から聞き取りにくいと言われている場合は、早めに動くほうが選択肢が広がります。
Q6. 家で発音の練習をさせてもいいですか?
自己流の練習は、誤った口や舌の動きを固定してしまうことがあります。練習の方法は、状態を評価した上で決めるものです。家庭では読み聞かせや会話の量を増やすほうが安全です。
まとめ
- 構音は5歳までに9割が確立されるとされている。音には育つ順序があり、さ行は後になりやすい
- 構音の異常の頻度は小学校低学年でおよそ10%に及ぶことがある
- 機能性構音障害(発音の覚え違い)は小学校低学年の内に自然に改善することが多い
- 器質性構音障害(口蓋裂など構造の問題)は手術と訓練が必要。待っても変わらない
- この見分けは家庭ではできない。診てもらった上での様子見にすると安心して待てる
- 発音の前に聞こえの確認。中耳炎を繰り返しているなら特に
- 家庭では言い直させない。大人が正しい音でゆっくり聞かせる
- 年長で複数の音が不明瞭、話すのを避ける、急に変化したら相談
「そのうち直る」で片づけるか、心配し続けるか。この二択で悩む必要はありません。一度診てもらえば、待つ根拠が手に入ります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください