この記事の主な参照ソース
- 「子どもとメディア」の問題に対する提言(日本小児科医会) — 5つの提言の原文
- 青少年のインターネット利用環境実態調査(こども家庭庁) — 学年別の利用時間と利用内容
- インターネットトラブル事例集(総務省) — 実際に起きているトラブルの事例
- 学校における携帯電話の取扱い等について(文部科学省) — 学校での端末の扱い
「あと1回だけ」が3回続いて、結局30分オーバー。取り上げれば泣かれて、こちらも疲れる。動画とゲームの時間は、いまや家庭でいちばん揉めるテーマかもしれません。
「1日◯分」と決めても守られないのは、家庭の統制が甘いからではありません。時間だけを決めるルールは、破りやすい構造になっているからです。
この記事では、日本小児科医会の提言と国の調査をもとに、続くルールの組み立て方を整理します。
いまの子どもは、どのくらい見ているのか

こども家庭庁が毎年行っている「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、小学生(10歳以上)の平均利用時間は約3時間46分、中学生は約4時間42分、高校生は約6時間14分と報告されています。
利用内容の上位も明確です。小学生(10歳以上)では動画を見るが90.5%、ゲームをするが87.5%、勉強をするは67.3%でした。
数字を見ると「うちだけじゃなかった」と少しほっとする一方で、3時間46分という長さには考えさせられます。学校から帰って、宿題をして、夕食を食べて——その合間に3時間以上の画面時間が入っているということです。
低年齢層(0〜9歳)でもインターネット利用は広がっており、動画視聴が中心という傾向が示されています。「小学生になってから考えよう」では遅いというのが実情です。
日本小児科医会の5つの提言|2004年に出された基準

日本小児科医会の「子どもとメディア」対策委員会は、2004年に提言を公表しています。スマートフォンが登場する前の提言ですが、いまも各地の自治体や医師会が引用しています。
- 2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう
- 授乳中、食事中のテレビ・ビデオ視聴はやめましょう
- すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます
- 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう
- 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう
20年以上前の提言なので、「テレビ・ビデオ」をスマートフォンやタブレットに読み替える必要があります。読み替えたうえで見ると、時間の話は1項目だけで、残りは「場面」と「場所」と「決め方」の話だと気づきます。
ここが今日の本題です。守られやすいのは、時間より場面のルールのほうなんです。
「時間」より「場所と場面」で区切る

時間ルールが揉めるのは、境界があいまいだからです。「あと1分」「いま良いところ」の交渉余地が常に残ります。
対して、場面ルールには交渉の余地がありません。
場面で区切るルールの例
- 食事中は消す(家族全員で。大人のスマホも含む)
- 寝る1時間前からは見ない
- 宿題と持ち物準備が終わってから
- 車の中はOK、食卓ではNG
- 外食先では出さない(家族で決めた例外だけ許可)
場所で区切るルールの例
- 見るのはリビングだけ
- 寝室・子ども部屋には端末を持ち込まない
- 充電はリビングの決まった場所で(夜間の持ち込みを物理的に防げます)
このやり方の良いところは、大人も同じルールに乗れることです。「お父さんは食事中もスマホ見てるじゃん」と言われた時点で、時間ルールは崩れます。場面ルールなら、家族全員に同じ線を引けます。
そのうえで時間の上限を添えると機能します。「リビングで、宿題のあと、1日◯分まで」という組み立てです。
年齢別のルール設計

年齢が上がるほど、ルールは「禁止」から「自己管理の練習」へ移ります。
| 年齢 | ルールの重心 | 具体例 |
|---|---|---|
| 0〜2歳 | 提言どおり控える | テレビ・動画は原則見せない。授乳中・食事中は消す。生活音としてつけっぱなしにしない |
| 3〜6歳 | 場面と時間をセットで | 見るのは決まった時間・決まった場所。終わりは大人が告げる。内容は事前に選ぶ |
| 小学校低学年 | 終わり方を練習する | タイマーを子ども自身にセットさせる。終わったら報告。寝室に持ち込まない |
| 小学校中〜高学年 | 自分で管理する範囲を広げる | 週の合計時間で管理する方式に。課金・アカウント・アップロードのルールを追加 |
終わり方の練習は見落とされがちです。「◯分になったら自分で止める」ができるようになるには時間がかかります。最初は「止められたね」を毎回言葉にして返すところから始めます。
高学年になったら、時間の話だけでなく課金とアップロードの話が必要になります。国民生活センターには、子どものオンラインゲーム課金に関する相談が多数寄せられています。動画を「見る」から、投稿する・課金するへ広がる時期に、ルールを更新してください。
ルールが破られたときの立て直し方

守られなかったとき、取り上げるのが最も手軽です。ただ、取り上げは短期的には効いても、次のルール作りには使えません。子どもは隠すようになります。
代わりに、この順で進めます。
1. 事実を確認する — 責める前に「何分だったか」「何を見ていたか」を一緒に見ます。スクリーンタイムの機能で客観的な数字が出ます。
2. 理由を聞く — 「友達との約束があった」「終わり方が分からなかった」「宿題が終わっていなかったから逃げた」。理由が分かれば対処が変わります。
3. ルールを一緒に修正する — 守れない設定なら、設定のほうを直します。週末は長め、平日は短め。イベントの日は例外。現実に合わせて改定するルールは守られます。
4. 次の期限を決める — 「2週間やってみて、また見直そう」と期限を切ると、守る側も試す気になります。
日本小児科医会の提言も、5つ目に「保護者と子どもでルールをつくりましょう」を置いています。一方的に決めたルールは、決めた瞬間から破られる方向に動く、という前提で考えたほうが現実的です。
よくある誤解とNG例

誤解1:完全に禁止するのが一番安全 学校でもタブレットを使い、友達との会話にも動画やゲームが出てきます。全面禁止は、家庭外で無防備に触れることにつながります。使い方を一緒に学ぶ場を家庭に置くほうが安全です。
誤解2:時間さえ守っていれば内容は問わない 総務省のインターネットトラブル事例集には、SNSでの投稿や見知らぬ人とのやりとりから起きるトラブルが多数掲載されています。何を見ているか、誰とつながっているかは、時間と同じくらい重要です。
誤解3:教育系の動画なら長時間でも問題ない 内容の良し悪しと、画面に向かう時間の長さは別の問題です。睡眠時間と外遊びの時間を削っていないかで判断してください。
誤解4:寝る前の動画は寝かしつけに便利 就寝直前の視聴は、寝つきを妨げる方向に働きます。日本小児科医会の提言も、子ども部屋に端末を置かないことを挙げています。寝室に持ち込まない運用のほうが結果的に楽です。
NG例:親が見せたいときだけ渡し、都合が悪くなると取り上げる 基準が親の都合で変わると、子どもはルールではなく機嫌を読むようになります。「渡す条件」を先に決めておいてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもの動画は1日何時間までにすべきですか?
日本小児科医会は2004年の提言で、すべてのメディアへ接触する総時間を1日2時間までを目安と示しています。ただし年齢や学校でのタブレット利用状況で事情が変わるため、時間だけでなく「食事中は消す」「寝室に持ち込まない」といった場面のルールと組み合わせるのが実情に合います。
Q2. 2歳前の子にテレビを見せてはいけませんか?
日本小児科医会の提言では、2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えることが示されています。あわせて、授乳中・食事中の視聴をやめることも挙げられています。現実には全く見せないのが難しい場面もあるため、まず「つけっぱなしにしない」から始める家庭が多いです。
Q3. ルールを決めても守られません。どうすればいいですか?
守れない設定になっている可能性があります。実際の生活時間に合わない、終わり方が決まっていない、大人が例外になっている、のどれかが原因になりがちです。子どもと一緒に修正し、2週間の試用期間を決めて見直してください。
Q4. 小学生の平均的な利用時間はどのくらいですか?
こども家庭庁の調査では、小学生(10歳以上)の平均利用時間は約3時間46分です。利用内容は動画を見るが90.5%、ゲームをするが87.5%、勉強をするが67.3%と報告されています。
Q5. 学校のタブレットも時間に含めるべきですか?
学習のための利用と、余暇の視聴は分けて考えるほうが管理しやすくなります。家庭のルールは余暇の時間を対象にし、学習端末は「宿題が終わったら閉じる」という運用にするとシンプルです。
Q6. 寝る前に見せるのをやめさせるには?
充電場所をリビングに固定し、就寝前に全員が端末を置く運用にすると、意志の力に頼らずに済みます。大人も同じ場所に置くと、子どもが納得しやすくなります。
Q7. 動画からゲームや課金に移っていく時期は、何を追加すればいいですか?
アカウントの作り方、課金の仕組み、パスワードの管理、投稿するときの注意の4つです。国民生活センターには子どものオンラインゲーム課金の相談が多数寄せられており、決済まわりの設定を保護者が先に押さえておく必要があります。
まとめ
- 小学生(10歳以上)の平均利用時間は約3時間46分。動画90.5%、ゲーム87.5%
- 日本小児科医会の提言は5つ。うち時間の話は1つで、残りは場面・場所・決め方
- 時間より場面のルールのほうが守られる。食事中・就寝前・寝室が要点
- 大人も同じルールに乗れる形にする。例外があるとルールは崩れる
- 年齢が上がったら、時間だけでなく課金・投稿のルールを追加する
- 破られたら取り上げるより、事実確認→理由→修正→期限の順で立て直す
まず今日から変えられるのは、食事中に全員が端末を置くことです。ここが崩れていると、ほかのルールは効きにくくなります。
参考文献
- 日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会「「子どもとメディア」の問題に対する提言」(2004年)
- 日本小児科医会「子どもとメディア委員会」
- こども家庭庁「「青少年のインターネット利用環境実態調査」調査票・調査結果等」
- 総務省「インターネットトラブル事例集」
- 文部科学省「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」
- 国民生活センター「オンラインゲーム(各種相談の件数や傾向)」