この記事の主な参照ソース
- 乳幼児健診に関する取組み(こども家庭庁) — 制度の位置づけと実施状況
- 乳幼児健診について(こども家庭審議会 成育医療等分科会 資料) — 健診の目的と各時期の位置づけ
- 乳幼児に対する健康診査の実施について(厚生労働省 通知) — 実施要領の根拠
- 児童発達支援ガイドライン等の概要(こども家庭庁) — 健診後の支援につながる仕組み
案内が届いてから、当日までの数週間が長い。「指さし、まだしないな」「言葉、これで足りてるのかな」と気になり出して、ネットで検索して、余計に不安になる——1歳半健診の前は、だいたいこうなります。
先に結論を書いておきます。1歳半健診は、できるかどうかを採点する場ではありません。困りごとを早く見つけて、必要な支援につなげるための入口です。「その場でできなかった」ことと「発達に問題がある」ことは、まったく別の話です。
1歳半健診はどこで、いつ受けるのか

母子保健法第12条により、1歳6か月児健診と3歳児健診の実施は市町村に義務づけられています。対象は、1歳6か月児健診が満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児です。
こども家庭庁は、この2つの健診について地方交付税措置を行っており、全国で実施されています。
そのほかの健診の位置づけも整理しておきます。
| 時期 | 位置づけ |
|---|---|
| 1か月児 | 国庫補助の対象。実施を全国に広げる方針 |
| 3〜6か月児 | 地方交付税措置。多くの自治体で実施 |
| 9〜11か月児 | 地方交付税措置 |
| 1歳6か月児 | 母子保健法第12条により市町村に義務 |
| 3歳児 | 母子保健法第12条により市町村に義務 |
| 5歳児 | 国庫補助の対象。実施を全国に広げる方針 |
母子保健法第13条では、第12条の健診のほか、市町村は必要に応じて乳幼児に健康診査を実施・勧奨しなければならないとされています。
会場は保健センターなどの集団健診が一般的ですが、個別に医療機関で受ける方式をとる自治体もあります。案内の通知に従ってください。
当日の流れと持ち物

自治体で多少違いますが、おおむねこの順です。
- 受付 — 問診票と母子健康手帳を提出します
- 問診 — 事前に記入した問診票をもとに確認
- 身体計測 — 身長、体重、頭囲、胸囲
- 歯科健診 — 歯の本数、生え方、むし歯、フッ化物塗布を行う自治体も
- 内科健診 — 全身の診察、股関節、心音、皮膚など
- 保健師などとの面談 — 発達の確認、育児の相談、栄養や生活リズムの話
持ち物は、母子健康手帳、問診票、健診の案内、保険証・医療証、おむつ・着替え、飲み物、待ち時間用の小さなおもちゃ、そして相談したいことを書いたメモです。
服装は、脱ぎ着しやすいものにします。上下が分かれていて、ボタンの少ない服が扱いやすいです。
所要時間は1〜2時間かかることがあります。お昼寝の時間帯と重なると機嫌が崩れます。可能なら、その日は午前の予定を空けておき、前後の睡眠を調整しておくと当日が穏やかになります。
何を見ているのか|チェックされる項目

問診票や診察で確認されるのは、おおむね次のような項目です。
- 歩けるか — ひとりで数歩以上歩けるか
- 指さしをするか — ほしいものを指す、絵本の絵を指す、大人が指した方を見る
- 意味のある言葉が出ているか — 「ママ」「ブーブー」など、意味を伴った単語
- 積み木を積めるか — 手先の使い方、まねをする力
- 呼びかけへの反応、目線 — 名前を呼ぶと振り向くか
- 歯の状態 — 生えている本数、むし歯、歯みがきの習慣
- 食事・睡眠・排泄の様子
- 予防接種の進み具合
ここで大事なのは、保健師や医師は「その場の1回」だけで判断していないということです。問診票に書かれた家庭での様子、待合室での動き、親子のやりとり——全体を見ています。
会場では、いつもできることができないほうが普通です。知らない場所、知らない大人、たくさんの人。積み木を積まない、指さしをしない、ずっと泣いている。それは家での様子とは違うと、専門職の側も分かっています。
だからこそ、問診票に家での様子を具体的に書くことに価値があります。「家では絵本のわんわんを指さします」の一行が、判断材料になります。
「様子を見ましょう」と言われたら

健診の帰り道でいちばん重く感じるのが、この言葉かもしれません。ただ、これは幅の広い言い方で、実際には次のどれかを指しています。
1. 今の時点では判断が難しいので、時間を置いて確認したい 発達の速度には幅があります。1歳半の時点では差が大きく、数か月で追いつくことがよくあります。
2. フォロー健診・発達相談に来てほしい 自治体には、健診後の相談窓口や、心理士・言語聴覚士による発達相談が用意されていることがあります。ここは申し込めば使える資源です。
3. 専門機関につなぎたい 医療機関の受診や、児童発達支援などの紹介につながることがあります。こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインでは、児童発達支援を「発達支援(本人支援・移行支援)」「家族支援」「地域支援」に大別して整理しています。
不安を減らすために、その場で聞いておくとよいことがあります。
- 「具体的に、どの項目が気になりましたか?」
- 「次に確認するのはいつごろですか?」
- 「家でできることはありますか?」
- 「相談できる窓口を教えてください」
曖昧なまま帰らないのがコツです。何を心配されているかが分かれば、家での見方も変わります。
そして、指摘がなかった場合でも、気になることがあれば言ってください。健診は「指摘される場」ではなく「相談できる場」です。
健診を活かす準備|相談メモの作り方

当日は慌ただしく、聞きたかったことを聞けずに終わりがちです。メモを1枚持っていくだけで、健診の価値が変わります。
書いておくとよいこと
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 気になること | 「単語が3つくらいしか出ない」「呼んでも振り向かないことがある」 |
| いつから | 「1歳3か月ごろから変わっていない」 |
| 家での様子 | 「絵本のページはめくる」「指さしは食べ物のときだけする」 |
| 聞きたいこと | 「様子を見る目安の時期はいつか」「相談できる場所はどこか」 |
質問は3つに絞るのがおすすめです。多いと、どれも中途半端になります。
もう一つ。健診は子どもの育ちを見る場であると同時に、親の状態を見る場でもあります。眠れていない、上の子との関わりがつらい、孤立している——そうしたことも遠慮なく話してください。保健師はそこを聞くために座っています。
よくある誤解とNG例

誤解1:その場でできなかったら発達に問題がある 会場では、いつもできることができないのが普通です。判断は、家庭での様子を含めた全体で行われます。問診票に家での様子を書いてください。
誤解2:練習してから行ったほうがいい 積み木や指さしを直前に特訓する必要はありません。むしろ、普段どおりの姿を見てもらうほうが、必要な支援につながりやすくなります。
誤解3:指摘がなかったから相談してはいけない 健診は相談の場でもあります。気になることがあれば、指摘の有無にかかわらず話してください。
誤解4:「経過観察」は悪い知らせ 時間を置いて確認する、という手順にすぎません。むしろ、つながりが1本増えた状態だと考えてください。
NG例:欠席して連絡もしない 体調不良などで行けないときは、必ず連絡を入れて次の機会を確認してください。健診は無料で受けられる機会で、後日の個別対応が可能な自治体もあります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください
よくある質問(FAQ)
Q1. 1歳半健診はいつ受けるものですか?
母子保健法第12条により、市町村は満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児に対して健康診査を行うこととされています。多くの自治体では1歳6〜7か月ごろに案内が届きます。
Q2. 指さしをしません。大丈夫でしょうか?
指さしは確認項目の一つですが、その場でしないことだけで判断されるわけではありません。家庭でどんな場面で指さしをするか(食べ物のとき、絵本のとき、していないなど)を具体的に問診票に書き、保健師に相談してください。
Q3. 言葉が出ていません。何語くらい出ていれば安心ですか?
発達には幅があり、単語の数だけで判断されるものではありません。呼びかけへの反応、こちらの言うことが分かっている様子、身振りでのやりとりなども合わせて見られます。心配なときは健診でそのまま相談してください。
Q4. 会場でずっと泣いていて、何もできませんでした。再検査になりますか?
会場で普段どおりにできないのはよくあることです。必要に応じて後日の個別相談やフォロー健診が案内されますが、それは「不合格」という意味ではありません。
Q5. 「様子を見ましょう」と言われました。何をすればいいですか?
その場で「どの項目が気になったか」「次に確認する時期」「家でできること」「相談窓口」の4つを聞いておいてください。自治体には健診後の発達相談の窓口が用意されていることがあります。
Q6. 健診を欠席してしまいました。どうすればいいですか?
市町村の担当窓口に連絡してください。予備日や個別受診で対応できる場合があります。健診は子どもの育ちを確認する機会であるとともに、支援につながる入口でもあるため、受けておくことをおすすめします。
Q7. 健診で相談すると、療育をすすめられるのではと不安です。
紹介されることはありますが、それは支援の選択肢が増えるという意味です。こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインでは、支援内容が本人支援だけでなく家族支援・地域支援を含む形で整理されています。相談したから何かが決まる、という仕組みではありません。
まとめ
- 1歳6か月児健診は母子保健法第12条により市町村に義務づけられた健診
- 当日は受付→問診→計測→歯科→内科→面談の流れ。1〜2時間かかることも
- 見られるのは歩行・指さし・言葉・積み木・呼びかけへの反応・歯など
- 会場でできなくても、それだけで判断されない。家庭での様子を問診票に書く
- 「様子を見ましょう」は幅の広い言い方。その場で4つ質問して曖昧さを消す
- 相談メモを1枚持っていく。質問は3つに絞る
健診は、点数をつけられに行く場ではありません。味方が1人増える日だと思って出かけると、当日の気持ちが変わります。
参考文献
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」
- こども家庭審議会 成育医療等分科会「乳幼児健診について」(令和6年11月20日)
- 厚生労働省「乳幼児に対する健康診査の実施について」
- こども家庭庁 障害児支援部会「児童発達支援ガイドライン等の概要」
- こども家庭科学研究費補助金 研究事業「5歳児健康診査マニュアル」
- 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告 結果の概要」
※健診の内容・持ち物・実施方法は市区町村によって異なります。詳細はお住まいの自治体から届く案内をご確認ください。