
この記事の主な参照ソース
- かかりつけ医機能について(厚生労働省 医政局総務課) — 医療法における「かかりつけ医機能」の定義
- 国民の信頼に応えるかかりつけ医として(日本医師会) — かかりつけ医の役割と、選ぶのは患者側という考え方
- 外来(その4)中央社会保険医療協議会 総会資料(厚生労働省) — 小児かかりつけ診療料の算定要件・施設基準
- 子ども医療電話相談事業(#8000)について(厚生労働省) — 都道府県ごとの実施時間帯
- こどもの救急(厚生労働省研究班/日本小児科学会 監修) — 診療時間外に受診するかどうかの目安
引っ越し先の地図アプリで「小児科」と検索して、星の数を見比べている。……その時点で、ひとつ思い込みが入り込んでいるかもしれません。
かかりつけ医を決めるというのは、評判のいい先生を探し当てることだと思われがちです。でも公的な資料を読んでいくと、かかりつけ医は「機能」で定義されているものでした。しかも、決めるのは患者側だとはっきり書かれています。星の数で測ろうとしていたものと、少しずれているんですよね。
みなさんは、いまの小児科をどうやって決めましたか。「上の子のときからなんとなく」という方も多いはずです。引っ越しや出産は、それを整理し直せる数少ない機会でもあります。厚生労働省・日本医師会・日本小児科学会が公開している情報をもとに、決める前に確かめておけることを並べます。
「一度決めたら変えられない」——ありがちな3つの思い込み

まず、よく聞く思い込みから外していきます。
| よくある思い込み | 公的な情報ではこう説明されている |
|---|---|
| 一度決めたら変えられない | 日本医師会は「『かかりつけ医』は患者さんの自由な意思によって選択されます」と説明しています |
| 評判のよさで決めるもの | 医療法では「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」を「かかりつけ医機能」と定義しています |
| そこ以外にかかってはいけない | 日本医師会は、かかりつけ医の努めとして「必要なときには、適切なタイミングで適切な専門の医師や医療機関につなぎます」を挙げています |
3つとも、出発点がずれていたことになります。
とくに1つ目。「自由な意思によって選択されます」という一文は、裏を返せば選び直す自由も患者側にあるということです。ここがポイントなんですが、これは書き手の解釈ではなく、日本医師会が国民向けページに載せている説明です。
2つ目の「機能で定義されている」も大きい。厚生労働省の資料では、かかりつけ医機能として確保をめざす内容に、日常的によくある疾患への幅広い対応、休日・夜間の対応、入院先の医療機関との連携と退院時の受入、在宅医療、介護サービス等との連携が挙がっています。つまり、先生の人柄だけでなく、その医療機関が何をやっているかが中身なんです。
3つ目は、後で触れる小児かかりつけ診療料に「原則として1人の患者につき1か所」という考え方が出てくるためでしょう。ただしこれは診療報酬の算定ルールで、他の医療機関にかかることを禁じるものではありません。
かかりつけの小児科が担うこと

日本医師会は、かかりつけ医の努めを3つの角度から説明しています。いつでも、なんでも相談できるようコミュニケーションをとって診察すること。必要なときに適切な専門の医師や医療機関につなぐこと。予防接種や健康診断を担い、幅広く健康相談を受けること。
小児科に当てはめると、この「幅広く」の中身は年齢によってけっこう入れ替わります。
| 時期 | かかりつけの小児科と関わる主な場面 | 決める前に見ておきたいこと |
|---|---|---|
| 0歳(乳児期) | 乳幼児健診や定期予防接種で受診する機会が多い | 健診と予防接種をその医療機関で受けられるか |
| 1〜3歳 | 集団生活が始まり、感染症で受診する場面が増える | 診療時間、予約の取り方、時間外の連絡先 |
| 4〜6歳(未就学) | 小児かかりつけ診療料の対象となる年齢層にあたる | 登録の仕組みがあるか、同意の説明があるか |
| 小学生以降 | 体調をくずしたときの相談先として | 何歳まで診てもらえるか、どこへつないでもらえるか |
0歳のうちは「健診と予防接種をどこで受けるか」が、ほぼそのままかかりつけ選びになります。厚生労働省の資料でも、小児かかりつけ診療料の施設基準に乳幼児健康診査や定期予防接種の実施が挙がっています。
一方、小学生以降になると「何歳まで小児科なのか」が気になり始めます。ここは医療機関ごとに方針が違うので、決める段階で一度聞いておくと後から慌てずにすみます。
「小児かかりつけ診療料」は、同意して登録する仕組み

小児科の受付で「かかりつけの登録をされますか」と聞かれて、よく分からないまま用紙に記入した経験はありませんか。あれが小児かかりつけ診療料の同意にあたることがあります。
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)の資料では、この診療料をこう説明しています。小児科のかかりつけ医機能を推進する観点から、小児外来医療において、継続的に受診し、同意のある患者について、適切な専門医療機関等と連携することにより、継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する。
要点を保護者から見える形に置き直します。
| 項目 | 資料に書かれている内容 | 保護者から見ると |
|---|---|---|
| 対象 | その医療機関を4回以上受診した未就学児(6歳以上は6歳未満から算定している場合に限る) | 通い始めてすぐではなく、何度か受診した後に案内される |
| 同意 | その医療機関の医師をかかりつけ医とすることについて同意を得ている患者 | 勝手に登録されるものではなく、こちらが同意して成立する |
| 医療機関の数 | 原則として1人の患者につき1か所の保険医療機関が算定 | かけもち登録はしない前提。ただし他の医療機関の受診を禁じるものではない |
| 健診 | 健診歴と健診結果を把握し、発達段階に応じた助言・指導を行い、保護者からの健康相談に応じる | 健診の結果を踏まえた相談ができる |
| 予防接種 | 予防接種歴を把握し、有効性・安全性に関する指導やスケジュール管理等に関する助言を行う | 打ち忘れや順番の相談先になる |
| 電話等の相談 | 算定患者からの電話等による問い合わせに、原則として常時対応 | 時間外の連絡ルートが用意されている場合がある |
電話相談だけ補足を。原則は常時対応ですが、一定の要件を満たす常勤の小児科医がいる医療機関では、夜間(深夜を含む)と休日の相談について、地域で夜間・休日の小児科外来診療を担当する医療機関や、都道府県等が設置する小児医療の電話相談窓口(#8000等)を案内することでも可能とされています。登録したから夜も必ず先生に直接つながる、とは限りません。
そしてもうひとつ。この診療料はすべての小児科が届け出ているわけではありません。施設基準では、専ら小児科または小児外科を担当する常勤医が1名以上いること、小児科外来診療料と時間外対応加算の届出があることなどが求められ、さらにその医師が、初期小児救急医療への参加、市町村の乳幼児健康診査の実施、定期予防接種の実施、超重症児等への在宅医療の提供、幼稚園の園医または保育所の嘱託医への就任という5項目のうち3つ以上に該当している必要があります。
届け出ていない小児科が頼りにならないという話ではなく、制度上の届出という別の軸があると理解しておくのがちょうどいいと思います。
窓口で払う金額はこの記事では書きません。点数は改定のたびに見直されますし(この資料自体、平成30年度改定と令和2年度改定の変更点を整理したものです)、実際の負担額は加入している医療保険や自治体の子ども医療費助成で変わります。登録の説明を受けるときに確認してください。
見比べるときの7つの観点

ここからは実務です。候補が2〜3か所に絞れたら、次の観点で並べると差が見えてきます。
| 観点 | 具体的に見るところ | どこで確かめるか |
|---|---|---|
| 通いやすさ | 家や保育園からの距離、診療日、診療時間、土曜の扱い | 医療情報ネット、医療機関のサイト |
| 予約の仕組み | ネット予約の有無、当日枠の残り方、待ち時間の見え方 | 医療機関のサイト、実際に一度予約してみる |
| 感染対策の動線 | 発熱などの症状がある子と、健診・予防接種の子を時間や待合で分けているか | 受付で確認、院内の掲示 |
| 予防接種と乳幼児健診 | その医療機関で受けられるか、自治体の健診に対応しているか | 受付で確認、自治体の案内 |
| 専門医療機関との連携 | 必要なときにどこへ紹介してもらえるか | 受付で確認、院内の掲示 |
| 説明のわかりやすさ | 質問に答えてもらえるか、次にどうするかが伝わるか | 実際に受診してみる |
| 電話相談の可否 | 診療時間外の連絡先がどうなっているか | 受付で確認、医療機関のサイト |
7つ並べましたが、全部を満点で満たす医療機関を探すゲームではありません。自分の家の事情でどれが効くかが先です。共働きで送迎が綱渡りなら通いやすさと予約、下の子が生まれたばかりなら感染対策の動線。上位2〜3個だけ決めておけば判断は速くなります。動線の分け方は医療機関ごとに違うので、健診や予防接種で行くときの流れを一度聞いておくと安心です。
口コミ以外に、どこで調べられるのか
診療日や診療時間のような「確かめられる事実」は、公的な仕組みで調べられます。
厚生労働省の医療機能情報提供制度は、住民・患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的に、平成18年の第五次医療法改正で導入されました。病院等には医療機能に関する情報を都道府県知事へ報告する義務があります。これを全国でまとめた「医療情報ネット(ナビイ)」が令和6年4月から運用され、診療日や診療科目のほか、対応可能な疾患・治療内容や提供サービスも調べられます。
日本小児科学会の一般向けページも入口になります。小児科専門医検索のほか、こどもの救急、#8000、予防接種スケジュール、感染症や事故予防の情報がまとまっています。
院内の掲示も情報源です。機能強化加算の施設基準では、健康管理や保健・福祉サービスの相談、夜間・休日の問い合わせへの対応、必要に応じた専門医療機関への紹介を行っていることを見やすい場所に掲示するよう求めています。待合の壁の紙は、意外と読む価値があります。
口コミをゼロにしろとは言いません。ただ、書いた人の状況と自分の子の状況は違います。事実は公的な情報で押さえて、口コミは雰囲気の参考まで。その距離感が扱いやすいはずです。
夜間・休日の備えと、相談の目安

かかりつけ選びで意外と重い比重を占めるのが、ここです。中医協の資料には、小児について「約3割の患者はかかりつけ医に求める役割として夜間・休日対応を挙げている」という指摘があります。3人に1人。多いです。
ただ、夜間・休日をすべてかかりつけの医療機関で受け止める前提は現実的ではありません。備えを段階で持つほうが動きやすくなります。
| 状況 | 相談先 | 押さえておくこと |
|---|---|---|
| 診療時間内で判断に迷う | かかりつけの小児科 | 電話での問い合わせに対応しているか、事前に確認しておく |
| 時間外だが緊急ではなさそう | 医療機関が案内している時間外の連絡先 | 案内先が地域の医療機関や#8000になっている場合がある |
| 夜間・休日に相談したい | #8000(子ども医療電話相談事業) | 47都道府県で実施。実施時間帯は都道府県ごとに異なる |
| 受診が必要そうだが判断に迷う | こどもの救急(Web)、Q助(アプリ・Web) | 生後1カ月〜6歳が対象のサイトと、緊急度判定を支援するアプリ |
| 明らかに緊急 | 119番 | 判断に迷うならQ助の結果も手がかりになる |
| 地域の夜間・休日の受診先 | 自治体が案内する休日・夜間の急患窓口や在宅当番医 | 名称や運用は自治体ごとに違うため、事前に印刷して貼っておく |
#8000は都道府県が実施しているため、時間帯が全国一律ではありません。厚生労働省が公開している実施状況の一覧を見ると、24時間365日の県もあれば、夜間から翌朝までの県もあり、平日と休日で時間が分かれている県もあります。引っ越したら、まずここを確認し直してください。前の県の感覚のままだと、かけたのにつながらないことが起こります。
迷ったときの相談の目安
判断のよりどころとして、公的な監修がついたものが2つあります。
ひとつは「こどもの救急」。厚生労働省研究班と日本小児科学会が監修していて、生後1カ月〜6歳までの子どもについて、診療時間外に受診するかどうかの目安を症状から確認できます。ただしサイト自身が「病院を受診するかどうかの最終的判断はご家族ご自身で!」と書いています。答えを出す機械ではなく、材料をそろえる道具です。
もうひとつが総務省消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」。大阪大学医学部附属病院の協力を得て作られ、住民の緊急度判定を支援することを目的としています。当てはまる症状を選ぶと、「今すぐ救急車を呼びましょう」「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」「引き続き、注意して様子をみてください」といった対応が表示されます。アプリ版とWeb版があります。
夜中に判断を迫られてから探すのでは間に合いません。この2つと#8000の番号は、いま冷蔵庫に貼っておくものです。
「合わない」と感じたときにできること

説明が急ぎ足で質問しづらい。待ち時間が生活に合わない。理由はさまざまですが、「合わない」と感じたときに変えるのは制度の上で何も問題ありません。日本医師会が「『かかりつけ医』は患者さんの自由な意思によって選択されます」と書いているとおりです。小児かかりつけ診療料の同意も、こちらが同意して成立する仕組み。続ける義務が保護者側にあるわけではありません。
別の医師の意見を聞くことも、後ろめたく考える必要はないはずです。日本医師会の説明では、かかりつけ医の役割に「必要なときに適切な専門の医師や医療機関につなぐ」ことが含まれています。まずはいまの主治医に「一度ほかでも診てもらいたい」と伝えるところからで十分です。
変える段になったら、持っていくものを整理しておくと引き継ぎが早くなります。小児かかりつけ診療料の要件には健診歴・健診結果の把握と予防接種歴の把握が含まれています。新しい医療機関もそこを確認したいので、これまでの健診と予防接種の記録、飲んでいる薬や過去のアレルギーの記録、大きな病気やけがの経過をメモにしておくと話が通りやすくなります。
厚生労働省の資料には、継続的な管理が必要と判断される患者に対して、医療機関が提供するかかりつけ医機能の内容を説明するよう努めることとする、という記載もあります。「うちはこういう体制です」と説明してもらえる前提がある、ということ。遠慮せずに聞いていい場面です。
よくある質問(FAQ)
Q1. かかりつけ医は1か所に決めないといけませんか?
小児かかりつけ診療料に「原則として1人の患者につき1か所の保険医療機関が算定する」というルールはありますが、これは診療報酬の算定に関する決まりで、他の医療機関にかかることを禁じるものではありません。要件にはむしろ、他の保険医療機関と連携して受診先をすべて把握し、必要に応じて紹介を行うことが含まれています。
Q2. 小児かかりつけ診療料は、どこの小児科でも登録できますか?
いいえ。届出をしている医療機関だけです。常勤の小児科医の配置、小児科外来診療料と時間外対応加算の届出、担当医が初期小児救急医療への参加や乳幼児健康診査の実施など5項目のうち3つ以上に該当することが施設基準に含まれます。届け出ているかは受付で聞くのが確実です。
Q3. 登録すると窓口で払う金額は変わりますか?
診療報酬の項目なので点数は設定されていますが、この記事では金額を書きません。点数は改定のたびに見直され、実際の窓口負担は加入している医療保険の負担割合と自治体の子ども医療費助成で変わるためです。登録の説明を受けるときに確認してください。
Q4. セカンドオピニオンを受けるのは、いまの先生に失礼になりませんか?
かかりつけ医の役割には「必要なときには、適切なタイミングで適切な専門の医師や医療機関につなぎます」(日本医師会)が含まれています。ほかの意見を聞くのは、その延長線上と考えて差し支えありません。いまの主治医に伝えたうえで進めるほうが、記録や検査結果の共有もスムーズです。
Q5. 引っ越しでかかりつけを変えるとき、何を持っていけばいいですか?
これまでの健診と予防接種の記録がまとまっているもの、飲んでいる薬の記録、過去の大きな病気やけが・アレルギーのメモ。新しい医療機関も健診歴と予防接種歴を確認したいので、この3点があると引き継ぎが早く進みます。あわせて引っ越し先の#8000の実施時間帯も確認し直してください。
Q6. 夜中に迷ったとき、まずどこに相談すればいいですか?
かかりつけの医療機関が時間外の連絡先を案内していればそこへ。用意がない、つながらない場合は#8000です。判断材料が欲しいときは「こどもの救急」や総務省消防庁の「Q助」も使えます。ぐったりしている、意識がおかしいなど明らかに緊急と感じるときは、ためらわず119番へ。
Q7. 口コミサイトの評価はどこまで参考にしていいですか?
雰囲気を知る材料としては使えますが、書いた人の状況と自分の子の状況は違います。診療日、診療時間、対応可能な内容といった確かめられる事実は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)や医療機関の掲示で押さえるほうが確実です。
まとめ
- 医療法は「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」をかかりつけ医機能と定義している
- 日本医師会は「かかりつけ医は患者さんの自由な意思によって選択されます」と説明している。選び直しも同じ
- 小児かかりつけ診療料は、同意して登録する仕組み。4回以上受診した未就学児が対象で、原則1か所
- この診療料は届け出ている医療機関と、そうでない医療機関がある。届出の有無は別の軸として見る
- 見比べる観点は7つ。通いやすさ・予約・感染対策の動線・予防接種と健診・連携・説明・電話相談
- 事実は医療情報ネット(ナビイ)や院内の掲示で確認できる。口コミは雰囲気の参考まで
- 夜間・休日は#8000・こどもの救急・Q助・119番を段階で持っておく。#8000の時間帯は都道府県ごとに違う
全部そろった医療機関を探すのではなく、自分の家で効く観点を2つか3つ決めてから見比べる。それだけで、星の数を眺めていた時間はかなり短くなります。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください