
この記事の主な参照ソース
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省) — 年齢別の目安と昼寝のQ&A
- 保育所保育指針(厚生労働省告示) — 午睡の規定
- 保育所保育指針解説(厚生労働省) — 3歳以上児の午睡と就学
- 保育の中の睡眠をめぐる問題(こども家庭庁) — 園の午睡の実態調査
- こどもの睡眠(e-ヘルスネット/厚生労働省) — 生活リズム
「今日は、おひるねしない」
3歳の終わりごろから、布団に連れていこうとするたびにこう言われるようになりました。押し切って寝かせた日は、夜10時を過ぎても目が冴えている。抜いた日は、夕方にぐずぐずが始まって手がつけられない。
……で、どっちなんでしょう。
やめてみて、崩れて、また戻して。何往復もしているうちに、正解の年齢がどこかにある気がしてきます。
先に書いてしまうと、「何歳で昼寝をやめる」という公的な基準はありません。厚生労働省の資料にも保育所保育指針にも、その線引きは出てきません。何度も出てくるのは「個人差がある」のほうです。
この記事は、乳児の寝かしつけや夜泣きではなく、幼児期に昼寝が減っていく過程にしぼります。
「何歳でやめる」は、公的資料のどこにも書かれていない

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、昼寝の記述はごく短いものです。
たとえば乳幼児期には昼寝をしますが、小学校に上がる頃には昼寝の習慣は減ってきます
「減ってきます」。やめる、ではありません。
同じガイドのQ&Aには、もう少し踏み込んだ回答があります。
Q. こどもに昼寝は必要ですか? A. 4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下し、昼寝をすることによりむしろ、夜の寝つきの悪さ、睡眠不足、朝の目覚めの悪さなどが悪化する可能性が報告されています。このため夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしない選択肢が望ましい可能性があります。
ここがポイントなんですが、「4〜5歳になったらやめましょう」とは言っていません。夜の寝つきが悪い幼児は、という条件つきです。夜すんなり寝ている子まで対象にした話ではないんですね。
保育の現場のルールも同じ方向です。保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)は、午睡をこう扱っています。
午睡は生活のリズムを構成する重要な要素であり、安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するとともに、在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから、一律とならないよう配慮すること。
保育所保育指針解説は、この「差」を具体化しています。睡眠の発達には個人差があるため、3歳以上児では保育時間によって午睡を必要とする子どもと必要としない子どもが混在する場合もある、と。
国の資料が用意しているのは年齢の線ではなく、「その子はどっちか」を見るための枠組みです。
年齢別・1日の睡眠時間と昼寝の位置づけ

昼寝そのものの目安がない以上、手がかりになるのは1日の睡眠時間です。睡眠ガイド2023は、米国睡眠医学会の推奨として次の数字を紹介しています。1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間。同じ数字は厚生労働省のe-ヘルスネット「こどもの睡眠」にも載っています。
注意したいのは、この数字が幅で示されていることです。3〜5歳児なら10時間の子も13時間の子もいる、という書き方になっています。
| 年齢の目安 | 1日の睡眠時間の目安 | 公的資料での昼寝の扱い | この時期に見ておきたいこと |
|---|---|---|---|
| 1歳前後 | 11〜14時間(1〜2歳児) | 指針は乳児について「一人一人の生活のリズムに応じて、安全な環境の下で十分に午睡をする」 | 昼寝の回数や長さより、1日の合計が目安の幅に入っているか |
| 2歳 | 11〜14時間(1〜2歳児) | 指針は1歳以上3歳未満児で「食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活のリズムが形成される」 | 昼寝が後ろにずれていないかを、夜の入眠時刻とセットで見る |
| 3歳 | 10〜13時間(3〜5歳児) | 解説は3歳以上児で「午睡を必要とする子どもと必要としない子どもが混在する場合もある」 | 寝る日と寝ない日の差を、1〜2週間分メモに残す |
| 4〜5歳 | 10〜13時間(3〜5歳児) | ガイドQ&Aは「4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下」 | 昼寝をした日としない日で、夜の寝つきと翌朝の機嫌を比べる |
| 就学前後(6歳〜) | 9〜12時間(小学生) | 解説は5歳頃について「徐々に午睡のない生活に慣れていくようにすることが大切」 | 起床時刻を先に固定し、そこから逆算して就寝時刻を決める |
年齢の区切りは資料のものをそのまま置いています。5歳から6歳で目安が10〜13時間から9〜12時間に切り替わりますが、誕生日を境に必要な睡眠が急に減るわけではなく、資料の区分の都合です。
睡眠不足が続いたときの影響にも、ガイドは触れています。肥満のリスクが高くなること、抑うつ傾向が強くなること、学業成績が低下すること、幸福感や生活の質(QOL)が低下することが報告されている、と。
ただしこれは、「昼寝をさせなかったせい」の話ではありません。問題にされているのは1日の合計で、その内訳ではないんですね。
卒業が近いサインと、まだ必要なサイン

判断材料になるのは年齢ではなく、1日のどこかに出てくる変化です。睡眠ガイドが挙げる「夜の寝つきの悪さ」「朝の目覚めの悪さ」、こども家庭庁の部会資料が研究の紹介として挙げる「朝の機嫌の悪さ」。家庭で観察できる形にすると、次のようになります。
| 見る場面 | 卒業が近づいているサイン | まだ昼寝が必要そうなサイン |
|---|---|---|
| 昼寝のとき | 布団に連れていってもなかなか眠らない、寝転がって遊び出す | 布団に入るとすぐに眠りに入る |
| その日の夜 | 昼寝をした日だけ、夜の寝つきが遅くなる | 昼寝をしても、いつもの時刻に眠る |
| 夕方 | 昼寝なしでも夕食まで機嫌が保つ | 夕方に泣き崩れる、抱っこから降りない |
| 翌朝 | 自分で起きてきて機嫌がよい | 起こしても機嫌が悪い、なかなか起きられない |
| 週末 | 昼寝なしの日が続いても崩れない | 昼寝を抜いた日の疲れが翌日まで残る |
左右のどちらかにきれいに寄ることは、まずありません。昼寝では眠らないのに夕方は崩れる、という組み合わせもよくあります。その場合は「まだ移行の途中」と読むのが素直です。
判断を1日でやらないこと。運動会の練習が続いた週と、雨で室内遊びだった週では、同じ子でも必要な休息が変わります。指針解説も、普段は午睡を必要としない子どもでも、午前中の活動などで疲れが見られる場合や体調が良くない場合には、状態に応じて午睡をしたり静かに体を休めたりできるよう配慮する、としています。園でそう扱うものを家庭で固定する必要はありません。
昼寝の長さと時間帯を手直しする

いきなりゼロにするより、長さと時間帯を動かすほうが現実的です。ただし「◯時までに◯分まで」という数字のルールは公的資料に見当たりません。ネットで見かける分数は、たいてい出典がついていないんですよね。
代わりに参考になるのが、園が実際にやっていることです。こども家庭庁の「幼児期までのこどもの育ち部会」に出された資料に、都内某区の保育所管理職への調査(2022年11月・29園)の数字が載っています。
| 年齢 | 午睡に入る時刻(平均) | 午睡時間(平均) | 「園児によって午睡をする時間は異なる」と答えた園 |
|---|---|---|---|
| 3歳児 | 12時37分 | 116.5分 | 10園 |
| 4歳児 | 12時55分 | 107.1分 | 16園 |
| 5歳児 | 13時16分 | 85.5分 | 16園 |
3歳から5歳にかけて、始まりが約40分遅くなり、長さは約30分短くなっています。遅く始めて、短く終える方向ですね。同じ調査で「全員が同じ時間午睡をする」と答えた園は3歳児17園・4歳児11園・5歳児9園と減り、「園児によって異なる」が増えます。ただ29園の調査なので、全国平均としては読めません。
夜への響き方について、この資料は福田一彦氏の研究を紹介する形で、自然な状態では消失する午後の昼寝を人為的にとらせることで夜間睡眠の就床時刻を後退させ、「朝の機嫌の悪さ」や「登園渋り」が悪化する、と記しています。睡眠ガイドのQ&Aが挙げた「夜の寝つきの悪さ」「朝の目覚めの悪さ」と重なる指摘です。
家庭で手直しするなら、丸ごと外さず、起こす時刻を先に決めておく。そのほうが続けやすいです。
この場面でよくある3つの誤解
「昼寝をさせないと発達に悪い」 — そこまでの記述は公的資料にありません。指針解説は午睡を「乳幼児期の発達過程や一日の活動において必要なこと」としつつ個人差も書き、睡眠ガイドは4〜5歳以降は必要性が低下するとしています。
「もう◯歳だから、昼寝は要らない」 — 逆向きの決めつけです。指針解説が想定するのは、普段は必要としない子でも疲れた日には休めるようにしておく運用でした。
「1日やめてみてダメだったから、まだ早い」 — 1日の結果は、その日の活動量や天気に引きずられます。判断するなら1〜2週間、就寝時刻・起床時刻・昼寝の有無をメモしてから。
保育園の午睡は「一律にしない」と決まっている

「園で寝てくるから、夜が遅くなる」。この悩みを園にぶつけていいものか、迷う人は多いはずです。
結論から言えば、相談していい話です。指針が「一律とならないよう配慮すること」と定める以上、午睡の扱いは相談の対象になります。幼保連携型認定こども園教育・保育要領にも同趣旨の規定が。指針解説はさらに踏み込み、午睡を必要としない子どもについても、伸び伸びと遊ぶことができる充実した環境や体制を整えておくことが求められる、としています。
とはいえ実態は園によってかなり違います。同じ部会資料が引用する令和4年度の調査(幼保連携型認定こども園対象)では、「決まった年齢で午睡をやめる」と答えた園が地域別に59.8%〜91.8%、「卒園まですべての園児が午睡を行う」は2.0%〜15.4%でした。5歳児で眠りたくない園児がいる場合は、「一緒に布団に入る」が38.2%、「別の活動をする」が16.6%です。
この差がどこから来るのかも、同じ資料にあります。午睡を一律にさせないために必要なこととして園が挙げたのは、起きている子どもを保育できる職員の確保と、眠る子と起きている子が別々に過ごせる場所の確保でした。方針というより人と部屋の問題であることが多いわけです。
園と家庭で方針が違うときの伝え方
日本保育協会の全国調査(2023年2月・回答390園)では、保護者から午睡の時間に関して要望を受けたことがある施設が47.5%、ない施設が49.1%。ほぼ半々で、珍しい相談ではないと読めます。
- 記録を先に渡す — 「夜遅くて困っています」より、1〜2週間分の就寝時刻・起床時刻・昼寝の有無のメモのほうが早く話が進みます
- お願いではなく相談の形にする — 「短くできませんか」ではなく「家ではこうです、園ではどう見えますか」から始めるほうが噛み合います
- 共通の土台を確認する — 指針解説は、家庭での就寝時刻に配慮して午睡の時間や時間帯を工夫し、柔軟に対応する、としています
指針も、基本的な生活習慣の形成にあたっては家庭での生活経験に配慮し、家庭との適切な連携の下で行うようにすること、と定めています。
就学に向けた生活リズムと、相談の目安

小学校に上がると、昼寝の時間はなくなります。これに向けた考え方を、指針解説ははっきり書いています。
さらに、5歳頃の子どもについては、就学後の生活も見通し一日の生活のリズムを形成していく観点から、保護者と連携をとりつつ、一年間の流れの中で子どもの心身の健康の状況と併せて考えながら、徐々に午睡のない生活に慣れていくようにすることが大切である。
「一年間の流れの中で」「徐々に」。年長の3月に急に切り替えるのではなく、1年かけて移していくイメージです。同じ段落は、午睡を一律にさせるのではなく、子ども一人一人が自分で生活のリズムを整えていけるようにしていくことが望ましい、と続きます。
夜の時刻をいじるより朝を固定するほうが早い、というのが睡眠ガイドの立場です。乳幼児期については、朝起きる時間を決めてカーテンを開けて部屋を明るくすること、朝食後は戸外に出て活動することを挙げています。朝食を摂らない生活習慣は睡眠・覚醒リズムの後退を促すとの報告も。e-ヘルスネットも、22時以降に就寝する割合が増えて生活リズムが夜型傾向にあると指摘し、家族ぐるみで早寝・早起きをすすめています。
家族ぐるみ、というところが地味に効きます。乳幼児期はこどもの睡眠習慣が親の睡眠習慣に影響されやすい、とガイドは書いているんですよね。
こんなときは相談を
昼寝の調整でどうにもならない状態が続くなら、医療機関へ相談する場面もあります。
- 昼寝をしてもしなくても、夜なかなか寝つけない日が続く
- 寝ているときの大きないびき、口を開けた呼吸、息が止まっているように見える(小児科か耳鼻咽喉科へ)
- 朝どうしても起きられない、日中に強い眠気がある状態が続く
寝ぼけて泣き出したり寝言を言ったりすることについては、睡眠ガイドは年齢とともに自然に消失するケースがほとんどなので心配しすぎなくてよい、としています。ただし睡眠が不足したり生活が不規則になると増える、とも。頻度が上がったと感じたら、まず睡眠時間の合計を見直してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 幼児の昼寝は、何歳でやめるのが普通ですか?
「普通」を決めた公的な基準はありません。睡眠ガイド2023は「小学校に上がる頃には昼寝の習慣は減ってきます」と書き、Q&Aで4〜5歳以降は必要性が低下するとしていますが、年齢で区切る書き方ではありません。
Q2. 保育園では寝ているのに、家では昼寝をしません。どちらに合わせればいいですか?
どちらかに寄せる必要はありません。指針解説は、午睡は子どもの年齢や発達過程、家庭での生活、保育時間を考慮して、それぞれの子どもが必要に応じて取るようにすることが大切だとしています。
Q3. 昼寝をやめると、夜は何時に寝るようになりますか?
その数字を示した公的資料は見当たりませんでした。実際の時刻は起床時刻や日中の活動量で動くので、1〜2週間の記録から自分の子の傾向をつかむほうが確実です。
Q4. 昼寝は何分までにすればいいですか?
分数の基準も、公的資料では確認できませんでした。参考になるのは園の実態で、こども家庭庁の部会資料に載る都内某区29園の調査では、平均の午睡時間は3歳児116.5分、4歳児107.1分、5歳児85.5分でした。
Q5. 昼寝をやめた日、夕方に寝落ちしてしまいます。起こしたほうがいいですか?
「起こすべき」「寝かせるべき」を決めた資料はありません。判断材料にするなら、その日の夜に何時に寝たか、翌朝の機嫌はどうだったかの2点です。
Q6. 就学前に昼寝を完全にやめておかないと、小学校で困りますか?
「やめておかないと困る」と書いた公的資料はありません。指針解説が求めるのは、5歳頃の子どもについて一年間の流れの中で徐々に午睡のない生活に慣れていくようにすること。完了の期限ではなく、移行のプロセスとして書かれています。
まとめ
- 「何歳でやめる」という公的な基準はない。厚生労働省の資料も保育所保育指針も、書いているのは「個人差がある」ほう
- 1日の睡眠時間の目安は1〜2歳児11〜14時間、3〜5歳児10〜13時間、小学生9〜12時間(米国睡眠医学会の推奨を睡眠ガイド2023が紹介)。いずれも幅のある目安
- 睡眠ガイドのQ&Aは4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下するとし、夜の寝つきが悪い幼児は昼寝をしない選択肢が望ましい可能性がある、としている
- 卒業のサインは「昼寝をした日だけ夜の寝つきが遅い」「昼寝なしでも夕方まで機嫌が保つ」。まだ必要なサインは「夕方に崩れる」「朝の機嫌が悪い」
- 判断は1日でせず、1〜2週間の記録で。園への相談にもそのまま使える
- 保育所保育指針は午睡を「一律とならないよう配慮すること」と定めている。園と家庭で違っても相談してよい
- 就学に向けては、指針解説が「一年間の流れの中で」「徐々に」午睡のない生活に慣れていくこととしている
昼寝の卒業は、ある日ぱたりと切り替わるというより、寝る日と寝ない日が混ざりながら比重が変わっていく期間です。「今日は寝なかった」で一喜一憂するより、2週間分のメモを1枚作るほうが早い。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください