この記事の主な参照ソース
- 気をつけよう!子どもの近視(日本眼科医会) — 屋外活動と30-30-20ルールの推奨
- 令和6年度学校保健統計(文部科学省) — 裸眼視力1.0未満の割合
- 乳幼児・学校保健関連情報(日本眼科医会) — 子どもの目に関する資料
- 3歳児健診の視覚検査(日本視能訓練士協会) — 早期発見の仕組み
学校から視力検査の結果が返ってきて、「B」や「C」の文字を見て焦る。あるいは、子どもがテレビに近づいて見ていることに気づく。近視は、気づいたときにはもう進んでいることが多い変化です。
そして厄介なのは、一度伸びた眼軸(眼球の前後の長さ)は元に戻らないという点です。だから対策は「戻す」ではなく「これ以上進ませない」が中心になります。
日本眼科医会が推奨している方法は、思ったよりシンプルです。
数字で見る現状|小学生の3割超が視力1.0未満

文部科学省が令和7年2月12日に公表した令和6年度学校保健統計(確定値)では、裸眼視力1.0未満の者の割合は、小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高等学校で7割程度となっています。学校段階が進むにつれて高くなる、という傾向がはっきり出ています。
この調査は学校保健安全法により実施される健康診断の結果に基づくもので、令和6年4月1日から6月30日の間に実施されました。健康状態については全体の25.4%(3,190,771人)を対象とした抽出調査です。
文部科学省は今後の対応方針として、子供の目の健康を守るための啓発資料の普及・周知、保健教育のモデル授業の動画作成に加えて、屋外での体験活動等の促進など視力低下予防に資すると考えられる取組に取り組むとしています。
国の側も「屋外」に注目している、というのがポイントです。
屋外に2時間|いちばん効くとされている対策

日本眼科医会は、近視がある子もない子も、1日2時間は外にいることが有効としています。
理由として説明されているのは、光の作用です。強い光が目の網膜に達すると、網膜内で光誘導性ドーパミンという物質が放出され、これが近視の進行を抑えるのではないかと考えられています。
ここで多くの人が誤解するのが、「日なたで運動しないと意味がない」という点です。日本眼科医会は、一見暗そうにみえる建物の影や木陰でも、屋外であれば、教室などの室内に比べて近視予防に十分な照度(照度計で1000〜3000ルクス以上)が確保できることが多いと説明しています。
つまり、こういうことです。
- 校庭で走り回る必要はない。外にいるだけでよい
- 日陰でもよい。むしろ熱中症対策としては日陰が望ましい
- 連続2時間でなくてよい。登下校、休み時間、放課後の合計で考える
現実的な積み上げ方を挙げます。
| 場面 | 時間の目安 | 工夫 |
|---|---|---|
| 登下校 | 往復20〜40分 | 歩く経路を選ぶ。車での送迎を減らす |
| 休み時間 | 15分×2〜3回 | 外に出る習慣づけ。学校の運用にもよる |
| 放課後・週末 | 30〜60分 | 公園、買い物への同行、ベランダでの活動も |
| 食事・おやつ | 15分 | 天気のいい日は外や窓際で |
合計で2時間、と考えると急に現実的になります。
30-30-20ルール|近くを見続けない工夫

もう一つ、日本眼科医会が推奨しているのが30-30-20ルールです。
- 画面から30cm以上離す
- 30分に1回は
- 20秒以上遠くを見て目を休ませる
近くを見続けることが近視の進行に関わると考えられているため、「離す」「区切る」「遠くを見る」の3点で組み立てられています。
家庭で実装するときのコツを順に見ていきます。
- 30cmを一度測って見せる — 口で言うより、実際に定規を当てるほうが伝わります
- タイマーを子どもに持たせる — 30分でアラームを鳴らし、鳴ったら窓の外を見る
- 机の配置を変える — 窓が視界に入る位置に机を向けると、遠くを見やすくなります
- 姿勢をセットで見る — 猫背になると距離が縮みます。椅子と机の高さを合わせます
- 明るさを確保する — 暗い部屋で画面を見ない
こども家庭庁の調査では、小学生(10歳以上)の平均インターネット利用時間は約3時間46分と報告されています。画面時間そのものを減らすのは簡単ではありませんが、距離と休憩は今日から変えられます。
気づくためのサインと、眼科を受診する目安

家庭で気づけるサインを挙げます。
- テレビや本に極端に近づく
- 目を細めて見る
- 頭を傾ける、あごを上げて見る
- 「黒板が見えにくい」と言う(席が後ろになったタイミングで出やすい)
- 目をよくこする、まばたきが増えた
- 頭痛や肩こりを訴える
- 集中が続かない、宿題を嫌がるようになった
受診の目安は次のとおりです。
- 学校の視力検査でB以下(1.0未満)の判定が出た
- 上のサインが続いている
- 片目だけ見えにくそうにしている
- 目つきが気になる(片方の目が別の方向を向いて見える)
- 3歳児健診で「要精密検査」と言われて、まだ受診していない
学校の視力検査は、A(1.0以上)、B(0.9〜0.7)、C(0.6〜0.3)、D(0.2以下)で示されるのが一般的です。B以上でも見えにくさを訴えているなら受診してかまいません。
近視と紛らわしいものもあります。3歳児健診で扱われる弱視は、視力そのものが育っていない状態で、近視とは対処が違います。日本眼科医会や日本視能訓練士協会は、3歳児健診での視覚検査による早期発見の重要性を示しています。「視力が悪い=近視」と決めつけず、眼科で確認してください。
※本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください
眼鏡についての考え方

「眼鏡をかけると視力がもっと落ちるのでは」という不安は、いまも根強くあります。
眼鏡は、近視の状態でピントを合わせるための道具です。かけないでいることが、近視の進行を止めるわけではありません。むしろ、見えにくい状態を我慢すると、黒板が読めない、姿勢が崩れる、疲れやすいといった影響が学校生活に出ます。
眼鏡について、家庭で決めないほうがいいことを書き出しておきます。
- 必要かどうか — 眼科の検査で判断されます
- 度数 — 弱めにする、強めにするといった調整は自己判断で行いません
- かける場面 — 常用か、授業中のみか。これも指示に従います
最近は、近視の進行を抑えることを目的とした治療の選択肢についても、眼科で相談できる場合があります。適応や効果、費用は個々の状況で異なるため、眼科医に直接確認してください。ここは家庭で判断できる領域ではありません。
そして眼鏡ができたら、学校に伝えるのを忘れないでください。座席の配慮につながります。
よくある誤解とNG例

誤解1:外遊びは日なたでないと意味がない 日本眼科医会は、建物の影や木陰でも屋外であれば室内に比べて十分な照度(1000〜3000ルクス以上)が確保できることが多いとしています。日陰でも構いません。
誤解2:眼鏡をかけると近視が進む 眼鏡は見えるようにするための道具です。かけないことが進行を止めるわけではありません。必要性と度数は眼科の判断に従ってください。
誤解3:近視は放っておいても、大人になれば止まる 成長とともに落ち着くことはありますが、進行の程度には個人差があります。伸びた眼軸は戻らないため、進行を抑える取り組みには意味があります。
誤解4:ゲームやスマホをやめさせれば解決する 近くを見続ける時間が関わるとされていますが、読書や勉強も近業です。時間をゼロにするのではなく、距離(30cm)と休憩(30分に20秒)で管理してください。
NG例:学校の視力検査でB判定が出たのに、様子を見る 判定は受診の案内です。見えにくさは学習に直結します。早めに眼科で確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもの近視を防ぐために、いちばん効果があるのは何ですか?
日本眼科医会は、近視がある子もない子も1日2時間は外にいることが有効としています。強い光が網膜に達すると光誘導性ドーパミンが放出され、近視の進行を抑えるのではないかと考えられています。
Q2. 屋外の2時間は、連続でないといけませんか?
連続である必要はありません。登下校、休み時間、放課後を合計して2時間になれば構いません。日なたでなくても、建物の影や木陰など屋外であれば十分な明るさが確保できることが多いとされています。
Q3. 30-30-20ルールとは何ですか?
日本眼科医会が推奨している目安で、画面から30cm以上離し、30分に1回は20秒以上遠くを見て目を休ませる、という内容です。近くを見続けないための工夫です。
Q4. 学校の視力検査でB判定でした。すぐ眼科に行くべきですか?
B判定は1.0未満に該当し、受診の案内が出ます。黒板が見えにくいという訴えがあるなら、早めに受診してください。見えにくさは学習と姿勢に影響します。
Q5. 眼鏡をかけると視力がもっと落ちませんか?
眼鏡はピントを合わせるための道具で、かけないことが進行を止めるわけではありません。必要性・度数・かける場面は眼科の判断に従ってください。
Q6. 小学生の視力低下は、どのくらい一般的なのですか?
文部科学省の令和6年度学校保健統計では、裸眼視力1.0未満の者の割合は小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高等学校で7割程度と報告されています。
Q7. 近視の進行を抑える治療はありますか?
進行抑制を目的とした選択肢について眼科で相談できる場合があります。適応・効果・費用は個々の状況で異なるため、必ず眼科医に確認してください。
まとめ
- 裸眼視力1.0未満は小学校で3割超、中学校で6割程度、高校で7割程度(文部科学省 令和6年度学校保健統計)
- 日本眼科医会の推奨は1日2時間の屋外活動。日陰・木陰でもよく、合計時間で考える
- 30-30-20ルール(30cm以上・30分に1回・20秒以上遠くを見る)を家庭に導入する
- 気づくサインは「近づく」「目を細める」「黒板が見えにくい」「頭を傾ける」
- 学校の視力検査でB以下なら受診。3歳児健診の「要精密検査」を放置しない
- 眼鏡の必要性・度数・かける場面は眼科の判断に従う
登下校を歩きにする。休み時間に外へ出るよう声をかける。この2つだけでも、屋外時間はかなり積み上がります。
参考文献
- 日本眼科医会「気をつけよう!子どもの近視」
- 文部科学省「令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値」(令和7年2月12日公表)
- 日本眼科医会「乳幼児・学校保健関連情報」
- 日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」
- 日本視能訓練士協会「3歳児健診の視覚検査」
- こども家庭庁「「青少年のインターネット利用環境実態調査」調査票・調査結果等」