この記事の主な参照ソース
- 乳幼児身体発育評価マニュアル — 厚生労働省
- 1歳6か月児健康診査 実施要領 — 厚生労働省
- 3歳児健康診査 実施要領 — 厚生労働省
- 幼児期の成長と発達 — 日本小児科学会
- ことばの発達と相談 — 日本言語聴覚士協会
まずは深呼吸を|言葉の発達には大きな個人差がある
「うちの子だけ遅れている?」という気持ち、よくわかります。ここがポイントなんですが、言葉の発達は身長や体重以上に個人差が大きい領域なんです。厚生労働省「乳幼児身体発育評価マニュアル」も「個人差が大きく、月齢別の目安は参考値」と明記しています。少しズレるだけで「異常」と判断されることはありません。

「理解」と「発語」は別もの
日本小児科学会によると、言葉の発達は2つの側面で評価されます。
- 受容言語(理解) — 言われたことがわかるか
- 表出言語(発語) — 自分で言葉を出せるか
大事なのは、理解は発語より先行することが一般的だということ。「あまり喋らないけど、言うことはよくわかる」お子さんはコミュニケーションの土台が育っているケースが多いんです。慎重派の子はある日突然爆発的に話し出すこともあります。
月齢別|言葉の発達マイルストーン早見表
厚生労働省と日本小児科学会の資料による月齢別の目安です。「参考値」なので、ぴったり当てはまらなくても心配する必要はありません。

月齢別 言葉の発達目安テーブル
| 月齢 | 受容言語(理解)の目安 | 表出言語(発語)の目安 | 家庭で気にするポイント |
|---|---|---|---|
| 1歳ごろ | 名前を呼ぶと振り向く 「ちょうだい」がわかる | 意味のある単語1〜数語 「マンマ」「ワンワン」など | 発語数より、視線・指差しが大切 |
| 1歳半ごろ | 簡単な指示が通る 絵本の指差しができる | 単語10〜20語程度 | 1歳半健診で確認される |
| 2歳ごろ | 2つの指示を続けて理解 | 二語文「ママ きた」など | 二語文が出始めるかが目安 |
| 2歳半ごろ | 色や形の理解が進む | 三語文に近づく | 単語の組み合わせから文へ |
| 3歳ごろ | 会話のキャッチボール | 簡単な会話・三語文以上 | 3歳児健診で確認される |
読み方のコツ: 表の数字は「平均的な目安」。1〜2か月のズレは個人差の範囲とされることが多く、判断材料にはなりません。
特に多いのが「2歳で単語しか出ない」という相談ですが、理解面が育っていれば個人差の範囲内のことが多いとされています。
1歳半健診・3歳児健診で見るポイント
「健診で引っかかったら…」と不安な方も多いですよね。健診はふるい分けではなく早期に気づいて支援につなげるための機会として設計されています。

1歳6か月児健診の言語項目
厚生労働省「1歳6か月児健康診査 実施要領」では以下がチェックされます。
- 意味のある単語が出ているか(おおむね3語以上を目安とする自治体が多い)
- 指差しや簡単な指示が通るか
- 視線の合い方や呼びかけへの反応
「様子を見ましょう」は「異常」ではなく、ばらつきの大きい時期を丁寧にフォローする仕組みです。
3歳児健診の言語項目
3歳児健診では表現の幅が広がっているかが見られます。
- 二語文・三語文を使えるか
- 簡単な質問(名前・年齢)に答えられるか
- 会話のキャッチボールが成立するか
- 発音は明瞭か(不明瞭さ単体では病的とは判断されません)
3歳前後の発音の不明瞭さは多くの子で見られるものです。「サ行・ラ行が出ない」だけで深刻に受け止める必要はありません。指摘されたら「相談のチャンス」と前向きに捉えてみてください。
個人差の範囲?相談を考えるサイン?比較で見える判断軸
「うちの子はどっち?」と迷うとき、個人差の範囲内のケースと相談を考えてもよいサインを並べてみましょう。

個人差 vs 専門相談を勧めるサイン 比較表
| 観点 | 個人差の範囲内のことが多い | 相談を考えてみてもよいサイン |
|---|---|---|
| 発語量 | 平均より少なめだが少しずつ増えている | 半年以上ほぼ変化がない/一度出ていた言葉が消えた |
| 発音 | 3歳前後で一部不明瞭 | 音そのものを発しにくい |
| 理解 | 簡単な指示は通っている | 名前を呼んでも反応が乏しい |
| 視線・指差し | 個人差ありつつ見られる | 視線が合いにくい/指差しが乏しい |
| 模倣・遊び | バイバイ・パチパチなどできる | 真似や見立て遊びが少ない |
| 全体の発達 | 体・手指の発達は順調 | 他の発達面でも気になる点が複数ある |
国立成育医療研究センターらによると、言語発達の遅れは多くが個人差の範囲内です。ただし発達の停滞・後退や非言語的サインを伴う場合は専門評価が推奨されます。
大事なのが相談と診断は別物だということ。日本言語聴覚士協会も、早期相談の目的は「早期理解と支援」だと明示しています。専門家と一緒に観察するイメージで気軽に活用してみてください。
家庭でできる関わり方と、相談できる無料窓口
「何かしてあげたい」「どこに相談すれば?」という方へ、家庭のヒントと無料窓口をまとめます。

今日から試せる5つの関わり方
日本言語聴覚士協会や国立成育医療研究センターが推奨する関わり方です。
- 子どもの目線で話す — 顔を見て話すと、言葉に集中しやすくなります。
- ゆっくり、短く話す — 「これ、車だよ」と区切ると単語と意味が結びつきます。
- 気持ちを代弁して返す — 「ブー」に「ブーブー、車きたね」と返しましょう。
- 絵本を一緒に楽しむ — 指差ししながら名前を言うと語彙が増えます。
- 言い直しより共感 — 「違うでしょ」より「そうだね」と受け止めると意欲が育ちます。
やらなくていいこと: フラッシュカード詰め込みや動画の長時間聞き流しは、言葉の発達に直接結びつきにくいとされます。双方向のやりとりが大切です。
主な相談先と特徴
こども家庭庁の情報を中心に整理しました。いずれも基本的に無料です。
- 市区町村の保健センター — 1歳半・3歳児健診の主管。随時相談可能
- 子育て支援センター — 各自治体に設置。保育士・保健師に相談できる
- かかりつけ小児科医 — 普段の様子を知っている安心感
- 発達障害者支援センター — 全国にあり、発達全般の相談を受けてくれる
- 言語聴覚士(ST) — 上記窓口経由で紹介される専門職
こども家庭庁では保護者の不安そのものも相談対象としています。「ちょっと気になる」段階で相談してOKです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2歳で単語しか出ません。受診すべき?
理解面が育ち、視線・指差し・模倣が見られるなら個人差の範囲内のことも多いです。気になる場合は保健センターで気軽に相談できます。
Q2. 男の子のほうが言葉が遅いって本当?
「男の子はゆっくり」と語られますが、性別差より個人差のほうがはるかに大きいというのが小児科学会の見解です。その子自身の発達を見るのをおすすめします。
Q3. 動画を見せすぎたから遅いのでしょうか?
一方的な動画視聴は言葉の発達に直接結びつきにくいとされますが、それだけで「遅くなる」とも断定できません。罪悪感より「双方向のやりとり」を増やすほうが建設的です。
Q4. 1歳半健診で「経過観察」に。どうすれば?
「経過観察」は「異常」ではなく「丁寧にフォロー」の意味です。再健診や保健センター相談で見守りましょう。心配なら早めに相談しても大丈夫です。
Q5. 発達障害が心配です。どこで判断?
医師や臨床心理士による総合評価で判断されます。家庭で判断する必要はありません。発達障害者支援センターやかかりつけ医経由で専門評価につながります。
Q6. きょうだいで言葉の出方が違います。普通?
兄弟姉妹でも発達のペースは大きく違います。他と比較するより、半年前のその子と比べて進んでいるかを見てあげましょう。
Q7. 早く相談すると「神経質」と思われませんか?
そんなことはありません。こども家庭庁も「保護者の不安そのものが相談対象」としています。「もっと早く相談すればよかった」というケースのほうが多いとされます。
最後に: 目安とのズレだけで「異常」と判断されることはありません。「相談」と「診断」は別物です。今こうして向き合おうとしていること自体、お子さんにとって何よりの環境です。
参考文献
- 厚生労働省「乳幼児身体発育評価マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000088083.pdf
- 厚生労働省「1歳6か月児健康診査 実施要領」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/kenkou-04.html
- 厚生労働省「3歳児健康診査 実施要領」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/kenkou-05.html
- 日本小児科学会「幼児期の成長と発達」 https://www.jpeds.or.jp/modules/public/index.php?content_id=142
- 日本言語聴覚士協会「ことばの発達と相談」 https://www.japanslht.or.jp/article/article_46.html
- 国立成育医療研究センター「子どもの発達と支援」 https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/development/index.html
- こども家庭庁「子育て支援センター・発達相談窓口」 https://www.cfa.go.jp/policies/child-rearing/
- 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報・支援センター」 https://www.rehab.go.jp/ddis/
本記事は医療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください